学会の発展の鍵は、『多様性(ダイバーシティー)』にあると言われます。性別、年齢、国籍だけでなく、専門(臨床、基礎研究、内科、外科、小児科…)、所属(大学、病院、企業、研究所・・・)、職種(医師、博士、医療専門職・・・)、研究対象(ヒト、動物、細胞、分子レベル・・・)など、多様性とは学問の質にも関わる重要な鍵です。
男女共同参画推進委員会(JES We Can: Japan Endocrine Society Women Endocrinologists Association)は、学会の多様性を目指す活動の一翼を担っています。その活動やロールモデルを紹介すべく、リレーメッセージを企画しました。ひとつひとつのメッセージから感じ取っていただくことがあると思います。是非、お読みください。
産婦人科医として考えること
島根大学 医学部 産科婦人科
折出 亜希
私は高校生の時にテレビでみた顕微授精の映像から「生殖」に興味をもちました。医学部に入学後いろいろ学んでいく中で、自分が進んでいく診療科として麻酔科、内分泌内科、産婦人科を考えるようになりました。麻酔科は薬を使うことで身体の状態が瞬時に変化するところが驚きでした。ホルモンもまた、体の状態を変化させるものであり、麻酔科と同じような理由で内分泌内科と産婦人科に関心をもちました。最終的には、もともと興味があった「生殖」に携わっていきたいと考え産婦人科を選択しました。大学院では主に下垂体の生殖関連ホルモンについて研究し、現在は視床下部を含めた生殖制御機構について研究を行っております。もともと興味があったことについて学び続けていける境遇にいることは、とてもありがたいことだと感じております。内分泌関連の学会に参加すると基礎の研究者の方々とお話をさせていただく機会があります。生殖以外の内分泌について学ぶことや、ヒト以外の生殖について知ることは大変に興味深く、わくわくするものです。まだ学生だった人達が修士課程終了後も研究者としての道を進んでいく姿をみて私も刺激を受けているところですが、男女問わずこのような若い人達がどんどん活躍できるような環境になるよう内分泌学会が先陣をきっていければと思います。
産婦人科は他の診療科と比べ女性医師の占める割合が多い科で、産婦人科勤務医の45%以上が女性ですが、ワークライフバランスの取り組みができているとは言い難いです。私のいる島根大学の産婦人科医局は75%が女性で、島根県全体をみても50%以上が女性医師です。子育て中の医師や、介護中の医師も多くいます。共働きの家庭も多く、夫の当直や出張の都合で妻の働き方が制限されたり、夫の転勤に伴って妻のほうが移動をしないといけない状況もあります。また昨今のコロナ禍では保育園や小学校が休園、休校となってしまい、急に仕事を早退したり休んだりする状況が頻繁におこりました。もちろん夫の協力もありますが、やはり母親が主に育児をする家庭が多く、働ける医師も休まざるをえない医師も厳しい状況が続きました。このような中で、仕事・育児・介護の両立や、キャリアアップをしていくためには、働き方の構造の大きな改革と、自身のワークライフマネージメントが重要であり、そのことを普及していく必要性を感じました。
産婦人科はとてもやりがいのある仕事です。私は生殖内分泌を専門に診療もおこなっていますが、分娩に立ち会った赤ちゃんが中学生になり月経痛で来院したり、不妊治療で通っていた患者さんが更年期になっても通院していたり、思春期からずっとみている患者さんもいます。まさに女性の一生涯を通じて携わることができるのは大きな魅力です。自分の興味があること、やりたいことに情熱を持っている若い人達が、男女関係なく仕事を継続し、活躍できる環境を整備することができるよう私もJES We Canの活動を通し寄与できたらと思います。
これまでのリレーメッセージ
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学 くらしき総合診療医学教育講座
岡山大学病院 内分泌センター 三好 智子
小児内分泌科医の立場から
ー日本小児内分泌学会(JSPE)における10年間の女性医師の動向調査についての報告ー
医療法人 むらしたこどもクリニック 理事長
日本小児内分泌学会 男女共同参画・ワークライフバランス委員 村下 眞理
areからwereへ
政策研究大学院大学 名誉教授、跡見学園女子大学 心理学部臨床心理学科 特任教授 鈴木(堀田)眞理