日本内分泌学会

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教育・研究

JES We Can リレーメッセージ

最終更新日:2025年6月24日NEW

学会の発展の鍵は、『多様性(ダイバーシティー)』にあると言われます。性別、年齢、国籍だけでなく、専門(臨床、基礎研究、内科、外科、小児科…)、所属(大学、病院、企業、研究所・・・)、職種(医師、博士、医療専門職・・・)、研究対象(ヒト、動物、細胞、分子レベル・・・)など、多様性とは学問の質にも関わる重要な鍵です。

男女共同参画推進委員会(JES We Can: Japan Endocrine Society Women Endocrinologists Association)は、学会の多様性を目指す活動の一翼を担っています。その活動やロールモデルを紹介すべく、リレーメッセージを企画しました。ひとつひとつのメッセージから感じ取っていただくことがあると思います。是非、お読みください。

いくつになっても夢を持つ ~内分泌代謝内科医として歩んだ26年~

                         公立陶生病院 内分泌・代謝内科
         赤羽 貴美子

こういった場所には「輝く」「ロールモデル」という言葉が踊りがちです。現在若手の会員においては女性はほぼ半数であるにも関わらず、主要な意思決定をする立場にいる女性医師はほんのわずか。JES We Canの目標は「女性会員の比率に見合った監事や理事を増やすこと」。では、果たしてこれが若手を含む女性学会員全体の目標となっているか。そんなことはないというのが実情ではないでしょうか。なぜか。令和7年になり、昭和を「不適切」と断じる時代になってもなお、女性医師の人生はまだまだキャリア形成においてハードルが高い現状があります。
折角リレーメッセージの機会をいただきました。多くの女性医師が「ロールモデル」の女性をみて「私には無理」と小声で呟いていることを知っています。私は「この生き方なら、夢を持てそうだな」と少しでも男女問わず感じていただけたらという思いで綴ります。

私は平成11年に医師免許取得、卒後5年市中病院で内分泌代謝内科を専攻しました。内分泌代謝内科を選択したのは初期研修病院で出会った故稲垣朱実先生に憧れたからです。頭脳明晰、教育熱心、そして何よりも内分泌代謝臨床の現場を心から愛している姿に感銘を受けました。女性医師は女性メンターの影響を受けやすい。そして彼女の「臨床を深く知るには研究を一度経験することは意義深い」という言葉、父も医学研究者であったことから名古屋大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学に進学し、4年間糖尿病に関する基礎研究に勤しみました。大学院生活は同年代の同局の仲間と切磋琢磨しながらの基礎研究は総じて楽しく、臨床と研究の両立で当時は朝~夜中まで働いていましたが充実した日々でした。独身であったので全ての時間を仕事に投じられていた側面はありました。
学位を取得後、平成19年から再び臨床現場に戻り平成20年に会社員の夫と結婚しました。このとき既に33歳、34歳~38歳は不妊治療をしながら臨床業務を並行するという、かなり過酷な時期でありました。体外受精不妊治療は身体的、時間的、金銭的負担が想像の遙か上を行き、仕事との両立は困難を極め、名古屋大学の医局に職場の調整をしていただいてなんとか2女児を36歳38歳で出産しました。

次女が1歳になる平成25年に現在勤務している公立陶生病院に赴任しました。この時現在も上司である吉岡修子先生に頂いた言葉を今も忘れません。
「先生、私と一緒に若い先生が夢を持って仕事が続けられる世界を作りませんか。」
私はつくづく素晴らしい女性メンターに出会う幸運を持ち合わせていたと思います。
一介の市中病院中堅医師である私が医師になってからずっと持ち続けて来た目標と夢。吉岡先生と共に歩む中で50歳になった今も少しも衰えること無く持ち続けています。

  1. 自分の出会った患者さんに現在における最善の治療を提供できるように日々自身の鍛錬を欠かさぬこと
  2. 未知の領域の病態に出会ったときにそれを探求するための方策と人脈を構築すること
  3. 若手の医師が男女問わず、医師としての仕事を心から楽しく思い、探究心を忘れない環境を作ること
  4. 共に働く仲間が幸せであることを願うこと

吉岡先生とは女性医師のキャリア形成の難しさについて本当に毎日話しています。結婚して出産するとどうしても子育てに時間を割かざるをえず、男女共同参画と言っても女性に子育ての負担が偏り、キャリア形成における男女差が埋まらない。また子育てで現場を離れる同僚が増えれば残されたスタッフに業務のしわ寄せが来て同僚同士で不満が生まれる。女性医師は心折れて代務生活に入り市中病院常勤から去る、これを回避するにはと吉岡先生と奮闘してきたこと。まずは楽しく積極的に働いて魅力的な職場を形成することで若手医師に選んでもらえる部署になり、マンパワーを確保すること。その上で子育てで誰かが欠けても全員が積極的にカバーに入ること。一人一人の業務に元々すこし余裕を持たせておくこと。子がいるいないで業務量に差をつけないこと。
ここ数年はありがたいことに毎年当科を希望してくれる若手が各学年1-2名おり、現在スタッフは6名。5名子育て中ですが非常に温かい部署でスタッフの笑顔は絶えません。
2025年糖尿病総会、内分泌総会には当科希望の研修医を連れて参加しました。

近年は学会もオンデマンド配信もあって現地に行かずに単位を取れ、子育て世代には非常にありがたいシステムでありこれはコロナ禍の恩恵でもあると思っていますが、現地参加の意義ということも私は一つ感じています。
これは上に書きました2.の目標に大きく関わることですが、JES We Canの活動に参加させていただいている目的の一つが、全国の先生方と人脈を構築するということであります。これは臨床家としてもとても大切で、コアな領域の疾病専門家と直接対面して話ができるまたとないチャンスであるということです。学会で構築した直接人脈によって何人もの難治症例患者さんを最善の治療に導くことができました。JES We Canの役員でもいらっしゃる槙田紀子先生にも大変お世話になりました。東海支部の先輩の諸先生方には人生相談もさせていただいています。人脈というのは何にも代えがたい財産であります。

またずっと市中病院で頑張ってきたことで夢のような体験を2024年12月にいたしました。
実は私は仕事の傍ら「推し活」もしていますし、趣味としてストリートピアノも弾いています。人生は楽しまなくては損です。現在NHK朝ドラ「あんぱん」でやなせたかしをモデルにした柳井嵩を演じている北村匠海君と彼の率いる「DISH//」というロックバンドを次女と親子で推しているのですが、フジテレビのめざましテレビの企画で「朝から頑張っている人をDISH//が応援する企画」に応募したところ、なんとヒットしまして、我らが公立陶生病院に本当にDISH//が来て、病院のスタッフの業務も応援してくれた上、病院のホールで私のピアノとDISH//がセッションしてくれ、病院のスタッフが感動して泣きながらセッションライブを聴くという奇跡が起きました。この模様は 2025年2月25日、26日の2日間に渡って全国放送されました。仕事も自分も家族も病院スタッフも全員の幸せを願って頑張ってきて良かったと心の底から思った瞬間でした。

    
DISH//と病院スタッフ(ライブセッション後)公立陶生病院ホールにて ※無断転載禁止

どうか 若い先生方にはいくつになっても、きっと私ならできる、続けられると小さくても大きくても「夢」を持って歩んでいって頂けたらと切に願っております。
 

これまでのリレーメッセージ

内分泌代謝内科医としての今までとこれから

独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター 吉田 守美子

自分自身であり続ける

島根大学医学部内科学講座内科学第一(内分泌代謝内科) 守田 美和

産婦人科医として考えること

島根大学 医学部 産科婦人科 折出 亜希

様々な多様性が活きる内分泌診療へ、そして医療者教育へ

岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学 くらしき総合診療医学教育講座
岡山大学病院 内分泌センター 三好 智子

小児内分泌科医の立場から
ー日本小児内分泌学会(JSPE)における10年間の女性医師の動向調査についての報告ー

医療法人 むらしたこどもクリニック 理事長
日本小児内分泌学会 男女共同参画・ワークライフバランス委員 村下 眞理

areからwereへ
政策研究大学院大学 名誉教授、跡見学園女子大学 心理学部臨床心理学科 特任教授 鈴木(堀田)眞理

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