第26回 2025年度(令和7年度)
日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)受賞コメント
(所属は受賞当時)
神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学部門
井上 朋也
この度は第98回日本内分泌学会学術総会において若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜り大変光栄に存じます。大会長の横手幸太郎先生、選考委員の先生方をはじめとした関係の諸先生方に心より御礼申し上げます。
Piezo1は機械刺激で開口する膜カルシウムチャネルです。今回の研究では、運動による機械刺激を骨格筋のPiezo1が感知し、タンパク合成を亢進することにより筋肥大に関与することを明らかにしました。サルコペニアは超高齢社会を迎えた我が国においては非常に重要な医学的課題であり、本研究成果が、サルコペニアの病態解明および新規治療法の創出につながることを目指し、今後も研究を発展させてまいりたいと考えております。
この度の受賞にあたり、ご指導いただきました平田悠先生、野村和弘先生をはじめ、日頃より多大なるご支援を賜っております先生方、そして小川渉教授に心から感謝申し上げます。
九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科
馬越 真希
この度は第98回日本内分泌学会学術総会において、若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。ご選考いただいた委員の先生方に深く御礼申し上げます。また、日頃よりご指導くださっている小川佳宏教授をはじめ、共に研究を進めてきた先生方に心より感謝申し上げます。
本研究では、シングルセルRNA-seq解析や空間トランスクリプトミクス、ゲノミクス、ステロイドミクスなどのマルチオミクス手法を用いて、アルドステロン産生副腎腫瘍の腫瘍内不均一性とその臨床的意義を明らかにしました。ゲノムから細胞・空間レベルにわたる統合的解析により、腫瘍の多様性とその背景にある分子基盤に迫ることができたと考えています。今回の受賞を励みに、今後も内分泌疾患の病態解明に真摯に取り組んでまいります。
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学
大谷 大輔
この度は第98回日本内分泌学会学術総会におきまして、若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜りまして大変光栄に存じます。会長の横手幸太郎先生をはじめ、選考委員ならびに関係の諸先生方に深謝申し上げます。
膵β細胞増殖制御機構の解明は、膵β細胞量の回復を目的とした糖尿病治療開発に向けての重要課題です。本研究では、小胞体ストレス関連因子ATF6αに着目して複数のマウス・細胞モデルで検討を行い、ストレス下の膵β細胞でATF6α欠損が増殖能低下やアポトーシス増加をきたすことを明らかにすると共に、ストレス適応を介した増殖膵β細胞誘導の成否にATF6αが大きな意義を持つ可能性を見出しました。今回の受賞を励みに、より詳細な分子経路の解明を目指して更なる研究に邁進したいと考えております。
最後に、ご指導いただきました村上隆亮先生、矢部大介先生、稲垣暢也先生、共同研究者の先生方にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
塩出 俊亮
このたびは、第98回日本内分泌学会学術総会において、若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。会長の横手幸太郎先生をはじめ、選考に携わってくださった先生方に心より御礼申し上げます。本研究では、血管内皮T-cadherinを介したtranscytosisにより、多量体アディポネクチンが血管外組織へ移行する新規細胞内経路を明らかにしました。今後はその分子機構の解明を進め、代謝制御の理解に貢献したいと考えております。
ご指導いただきました藤島裕也先生、西澤均先生、下村伊一郎教授、ならびに共同研究者の皆様に深く感謝申し上げます。
群馬大学生体調節研究所 代謝疾患医科学分野
都野 貴寛
この度は、第98回日本内分泌学会学術総会におきまして、若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜り大変光栄に存じます。会長の横手幸太郎先生をはじめ、選考委員の先生方ならびに学会関係者の方々に厚く御礼を申し上げます。
本研究では、膵島のシングルセルRNAシーケンス解析から、糖尿病治療薬イメグリミンが膵α細胞において小胞体ストレス関連分子であるCHOPを発現上昇させることを見出し、さらにグルカゴン分泌の抑制と膵β細胞への分化転換を誘導することを明らかにしました。小胞体ストレス関連分子を介した膵α細胞機能制御機構には未解明の点が多く残されており、今回の受賞を励みに、より詳細な分子メカニズムの解明に取り組む所存です。
最後に、当研究室の白川純教授、横浜市立大学の寺内康夫教授をはじめ、ご指導いただきました諸先生方に心より感謝申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
京都大学 大学院生命科学研究科 生体システム学分野
西田 朱里
この度は栄誉ある若手研究奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。会長の横手幸太郎先生をはじめ、選考委員の先生方ならびに関係の先生方に、心より御礼申し上げます。
神経の発達や修復を含む神経機能と腸内細菌叢との相互作用について、その詳細な分子機序は明らかでありません。そこで本研究では、腸内細菌代謝物である短鎖脂肪酸とその宿主受容体に着目し、神経発達が著しい胎児期から乳児期にかけて、短鎖脂肪酸受容体が特異的な発現パターンを示すこと、ならびにその欠損が交感神経の発達異常を引き起こすことを見出しました。本研究は、神経発達の分子機序への理解を深めるとともに、将来的には神経疾患の病態解明や新たな治療戦略の基盤になると期待されます。今回の受賞を励みに、今後さらに研究に邁進してまいります。
最後に、日頃よりご指導を賜っております木村郁夫教授をはじめ、温かいご助言をくださる多くの先生方に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
金沢大学 新学術創成研究機構
橋内 咲実
このたびは、第98回日本内分泌学会学術総会において、大変名誉ある若手研究奨励賞を賜り、誠に光栄に存じます。会長の横手幸太郎先生をはじめ、選考委員の先生方、並びに関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
我々は、迷走神経を介した脳-末梢連関による糖代謝制御とその役割の解明を目指して、研究を進めております。本研究では、脳-膵連関に着目し、迷走神経が一酸化窒素(NO)作用を介して、インスリン分泌を抑制することを見出しました。さらに、このNO性抑制作用が、肥満における迷走神経性インスリン分泌障害に重要であることを明らかにしました。今回の受賞を励みに、より一層研究に精進し、内分泌学の発展に貢献してまいる所存です。
最後に、日頃よりご指導・ご支援をいただいております、井上啓教授、稲葉有香准教授をはじめ、全ての共同研究者の先生方に、心より感謝申し上げます。
今後とも、ご指導・ご鞭撻の程、何卒宜しくお願い申し上げます。
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
星野 良朋
このたびは、若手研究奨励賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方ならびに関係の諸先生方に、心より御礼申し上げます。
今回我々は、後天性FGF23関連低リン血症性骨軟化症の原因不明症例において、PHEXを標的とする自己抗体を有する5症例を世界で初めて同定し、「自己免疫性骨軟化症」として新たな疾患概念を提唱しました。PHEX遺伝子は先天性FGF23関連低リン血症性骨軟化症の代表疾患であるXLHの原因遺伝子であり、本知見は、先天性疾患の原因遺伝子産物を標的とする自己抗体が、同様の表現型を示す後天性疾患の病因となり得ることを示唆するものと考えています。今回の受賞を励みに、自己免疫性骨軟化症の発症メカニズムの解明に向けたさらなる研究に取り組むとともに、本研究で用いた自己抗体検出法を「原因不明」とされている他の後天性疾患にも応用していきたいと考えております。
最後に、ご指導いただきました当研究室の伊東伸朗先生、金沢大学の岡本一男先生、ならびに共同研究者の先生方に、改めて心より感謝申し上げます。
京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター/
マギル大学ヒトゲノム学部/ハーバード大学ブロード研究所
吉治 智志
このたび、第98回日本内分泌学会において若手研究奨励賞という栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。
近年、バイオバンク規模のゲノムやプロテオームなどのマルチオミックスデータが急速に整備され、ヒトにおける網羅的・統合的解析が可能になりつつあります。本研究では、大規模ヒトゲノム・プロテオームデータに加え、遺伝子発現・エピゲノム・一細胞解析データを統合し、肥満が心血管疾患リスクを高める媒介因子としてエンドトロフィンを同定しました (Yoshiji et al., Nature Genetics 2025)。
本研究は、J. Brent Richards 先生をはじめ、京都大学およびマギル大学を含む複数機関の共同研究者各位の多大なるご支援により実現しました。また、臨床研修・大学院時代からご指導賜っている稲垣暢也先生、矢部大介先生、松田文彦先生をはじめ、多くの先生方に深く感謝申し上げます。
本研究が一つのきっかけとなり、現在はカナダ・モントリオールのマギル大学でPIとして研究室を主宰しています。ヒトゲノムやマルチオミックスデータを活用し、新規創薬と個別化医療の推進に貢献できるよう、チームとともに一層研究を進めてまいります。
名古屋大学環境医学研究所 分子代謝医学分野
和田 恵梨
この度は日本内分泌学会第26回若手研究奨励賞(YIA)を賜り、誠にありがとうございました。審査委員の先生方、並びに学会の関係者の皆様に、厚くお礼申し上げます。
わたしは管理栄養士として、臨床現場での栄養管理に従事してまいりました。その中で、科学的根拠が十分でない状況に直面することが多々あり、病態栄養学の基礎研究を進展させる必要性を痛感し、研究者を志しました。これまで多くの方々に恵まれ、博士課程では群馬大学 北村忠弘教授、学位取得後は名古屋大学 菅波孝祥教授のご指導のもと、多くの先生方にエンカレッジしていただきながら、「研究は楽しい!」という思いを持ち続けて活動することができております。今後も恵まれた環境、周りの方々への感謝を忘れず、更に研究を発展できるように努めてまいります。日本内分泌学会にも貢献していきたい所存ですので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。