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教育・研究

下垂体腫瘍(PitNET)の臨床的グレード・ステージ分類

最終更新日:2026年6月16日NEW

下垂体腫瘍(PitNET)の臨床的グレード・ステージ分類

 WHO2022(第5版)において、「下垂体腺腫」が「下垂体神経内分泌腫瘍;PitNET」へ名称が変更された理由の一つに、転移(悪性転化)は稀だが一部はaggressive, invasiveで良性腫瘍の枠を超えていることが挙げられた。しかしながら他臓器のNETとは異なり、PitNETにはいまだ確立したグレード分類は存在しない。

 WHO2004では、核分裂像が多く、Ki67指数3%以上、p53強陽性を満たす腫瘍を異型性腺腫(atypical adenoma)と定義し、臨床的にaggressiveな経過を示す可能性が高いとしたが、その根拠となるエビデンスが乏しくWHO2017でこの名称は削除された。代わって増殖性、浸潤性、Ki67指数高値を持ってhigh-risk adenomaとしたが明確な基準は示されなかった。現在、腫瘍の再発予測によく用いられているのは、「増殖能」と「浸潤性」を組み合わせたグレード分類である1)。Aggressive tumorの指標としては増殖能・浸潤性だけでなく、早期再発、標準治療抵抗性などが挙げられているが統一された定義は存在しない2-4)。一方、WHO2022分類では、immature Pit-1-lineage tumors, Crooke cell tumorsなど特定の組織型の腫瘍が臨床的にaggressiveなことが多いとしている。なお下垂体に原発する神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)は著しく稀または存在しないと考えられている5)

 また、下垂体腫瘍患者の長期QOL・生命予後には、腫瘍の再発・進行よりも内分泌機能障害の有無とその内容(クッシング病、先端巨大症、下垂体機能低下症など)がより大きく関与することも考慮する必要がある。近年、症状、腫瘍サイズ、浸潤性、内分泌障害の有無や内容などを判定量的にスコアリングする臨床分類法が提唱された6)。これは(組織所見のない)非手術例を含めた全下垂体腫瘍症例を対象としており、治療方針の決定や予後予測に有用とされている。

 PitNETのステージ分類についても、いまだ統一された基準は存在しない。鞍内から尾側や頭側の腫瘍進展に対してはCT以前のHardy分類やその後のWilson分類がいまだに一部では使われており、また腫瘍の側方進展(海綿静脈洞浸潤)にはKnosp分類が存在するが、これらを統合した包括的な分類は確立していない。このような状況を踏まえ、「PitNET」を提唱したIPPC(International Pituitary Pathology Club)では、他臓器悪性腫瘍と同様にUICC/AJCCのTNM分類に準拠したステージ分類の構築に取り組んでいる。

 PitNETのグレード・ステージ分類の確立は、なお多くの課題を抱え今後も難航が予想されるものの、本領域における最も重要な喫緊の課題の一つである。

 

Aggressive pituitary tumorの定義3) から改変

 

【文献】
1)Trouillas J, et al. Acta Neuropathol 126: 123-135, 2013
2)Dai C, et al. Oncotarget 7: 83657-83668, 2016
3)Nishioka H. Endocr J 70: 241-248, 2023
4)Raverot G, et al. Eur J Endocrinol 178: G1-G24, 2018
5)Inoshita N, et al. Brain Tumor Pathol 43: 65-72, 2026
6)Ho K, et al. Lancet Diabetes Endocrinol 12: 209-214, 2024

西岡宏(虎の門病院 間脳下垂体外科)

 

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