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日本内分泌学会の後輩会員に希む

最終更新日:2018年9月6日

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日本内分泌学会の後輩会員に希む

東京女子医大 名誉教授 鎮目 和夫

鎮目 和夫

 私は、1955年(昭和30年)から現在まで44年間内分泌学会会員であり、1979年から1984年迄理事長を務めたのでこの夏、中尾一和理事長の求めに応じ標題の一文を記する。

 私が内分泌学会の会員になった頃はいわゆる古典的な内分泌(Endocrine)のホルモンが対象であったが、その後Paracrine(細胞から分泌されて近隣の細胞に作用するもの)Autocrine(細胞内で生成されてその細胞に作用するもの)が含まれるようになり生体の活動に作用する全分野にわたる学問となった。学会の目的は研究の発表及び連絡、知識の交換、情報の提供等になっているが、会員の責務は研究である。これには基礎的なものと臨床的なものとがある。前者には新しいホルモンの発見、そのホルモンの分子構造の決定、その合成機序、分泌調節機序、作用機序の解明、測定法の開発等があげられ、後者にはホルモンの分泌異常、作用機序の異常による疾患の発見と治療法の解明などがあげられる。私が会員であった間に前者、後者ともに著しい進歩を成し遂げた。下垂体ホルモン分泌刺激物質の発見によりGuilleminやSchallyはノーベル賞をとり、ホルモンの微量免疫測定法の開発によりYallowはノーベル賞をもらった。(共同研究者であっ Bersonは死亡していたのでノーベル賞はもらえなかった。)Guillemin,Schallyはそういう物質は必ずあると思って長年月努力研究し、その物質を明らかにした。BersonとYallowはインスリンには抗体が出来にくいのが定説であったが、インスリンの抗体をつくってその微量測定法を開発し、その論文をNature誌に投稿したがインスリンには抗体が出来ないものとして、抗体を結合物質と書き改めることにより掲載してもらった。Berson,Yallowは更に努力してそれの結合物質が抗体であることを証明した。Guillemin,Schallyの研究はそういう物質は必ずあると思って研究を精力的に長期間続けて完成し、Berson,Yallowはインスリンに抗体が出来ることから抗原は抗体と競合的に結合する点に思いついて定説をやぶって免疫学的微量測定法を開発した。

 諸君は十分な理由があって存在すると信じたら新しいホルモンを発見されてもよい。何かヒントがあれば今迄の定説に反して新発見をされてもよい。ただ両者とも長期間研究費を必要とする。我が国の研究費は研究期間が限られるので成果が短期間で得られるような研究でないともらえない。良い結果が得られるかどうか分からないような研究には長期間の研究費はもらえない。かつてGuilleminが自分のこの成果はうまく行かない研究を長期間援助してくれたNIHのおかげであると云っていた。研究の好きな人に長期を要し、良い結果が得られるかどうかわからない様な研究を我が国でも研究助成機関が助成してくれると良いと思う。

 我々先輩もその点を改めるために努力すべきと思っている。諸君も定説に反することでも研究してみる、或いは思いついたら長期間やってみる必要がある。我が国の研究者も外国に行って結構オリジナルな研究をして来るが、我が国では研究職の待遇が悪いので、教育や診療をしながら研究をすることになる。もっと研究職の待遇を良くして若い研究の好きな人が一定期間研究に専心できるようにすべきと思っている。また、研究には助手が必要なので研究助成費の中に助手の人件費も要求出来ることになると良いと思う。

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