視床下部性肥満とは
二次性肥満のうち、視床下部の障害によって生じる肥満を視床下部性肥満といいます。視床下部には摂食調節に関わる神経回路、下垂体ホルモン分泌、自律神経機能、エネルギー消費調節に関与する中枢が存在しており、これらの機能障害により高度で難治性の肥満を呈することがあります。視床下部性肥満では、レプチン―メラノコルチン経路をはじめとするエネルギー恒常性維持機構の障害が関与すると考えられています。一部の遺伝性肥満では、これらの視床下部性調節経路に関わる遺伝子異常が認められます。原因としては、頭蓋咽頭腫など視床下部近傍腫瘍、腫瘍摘出術による視床下部損傷、放射線治療、脳血管障害などの後天的要因のほか、一部の遺伝性疾患が知られています。
この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
視床下部性肥満はまれな病態であり、一般人口における正確な患者数は明らかになっていません。一方で、頭蓋咽頭腫などの視床下部周辺の腫瘍、脳腫瘍に対する手術や放射線治療、その他の視床下部障害を受けた患者さんでは、視床下部性肥満を発症することがあります。そのため、このような背景をもつ患者さんでは、体重増加や代謝異常に注意することが重要です。また、一部の遺伝性疾患や極めてまれな神経疾患に伴って視床下部性肥満を呈することもあります。
この病気はどのような人に多いのですか?
視床下部性肥満は、主に視床下部に障害を受けた患者さんに発症します。代表的には、頭蓋咽頭腫など視床下部周辺に発生する腫瘍をもつ患者さんや、その治療に伴う手術、放射線治療を受けた患者さんがあげられます。また、頭部外傷などにより視床下部の機能が障害された場合にも発症することがあります。一方で、Prader-Willi症候群など一部の遺伝性疾患では、生まれつき視床下部の摂食調節機能に関わる異常を認め、視床下部性肥満を呈することがあります。
この病気の原因はわかっているのですか?
視床下部性肥満の原因は、大きく分けて、視床下部そのものが障害される場合と、遺伝子の異常によって視床下部の体重調節機能に影響が及ぶ場合があります。視床下部の障害は、主に頭蓋咽頭腫などの腫瘍、手術や放射線治療、頭部外傷などによって生じます。また、一部の遺伝性肥満では、食欲やエネルギー代謝の調節に関わる遺伝子の異常が原因として明らかになっています。一方で、視床下部の障害によって、なぜ高度で治療が難しい肥満につながるのかについては、現在も研究が進められているところです。
この病気は遺伝するのですか?
視床下部性肥満のすべてが遺伝するわけではありません。視床下部周辺の腫瘍、手術や放射線治療、頭部外傷などによって生じる視床下部性肥満の多くは、後天的に発症するもので、家族内で受け継がれるものではありません。一方で、Prader-Willi症候群など一部の遺伝性疾患や、食欲調節に関わる遺伝子の異常によって生じる肥満では、遺伝が関係する場合があります(遺伝性肥満の項を参照)。
この病気ではどのような症状がおきますか?
視床下部性肥満では、視床下部の障害の部位や程度、さらに下垂体ホルモンの低下の種類によって症状は異なります。肥満の発症には、食欲を調節する神経回路の障害による食欲亢進、自律神経機能の低下によるエネルギー消費の低下に加えて、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性腺機能に関わるホルモンの低下などが関与します。その結果、基礎代謝の低下、筋肉量の減少、体脂肪の増加につながり、通常の生活習慣改善だけでは体重管理が難しいことがあります。また、下垂体ホルモンの低下により、疲れやすさ、倦怠感、骨密度低下、月経異常、不妊、脂質異常症、脂肪肝などを伴うことがあります。原因となる疾患によっては、視力障害、頭痛、尿量の増加(尿崩症)などの症状を認めることもあります。
この病気にはどのような治療法がありますか?
まず、原因となっている疾患への対応が重要です。視床下部周辺の腫瘍では、術後の内分泌機能や体重調節機能への影響を考慮する必要があるため、経験豊富な専門施設で治療を受けることが望まれます。下垂体ホルモンの低下がある場合には、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモンなどの適切な補充療法を行います。肥満に対しては、食事療法、運動療法、行動療法を基本として行います。しかし、視床下部性肥満では、食欲調節機能の障害、エネルギー消費の低下、ホルモン異常などが複合しているため、一般的な肥満と比べて体重管理が難しい場合があります。特に小児期に発症した場合には、成長や学校生活、心理面への影響にも配慮が必要です。日常生活の中で身体活動を維持する工夫を行い、肥満の進行を予防するとともに、疾患への理解や心理的な支援を含めた総合的な治療が重要です。また、患者さんの状態によっては、肥満症治療薬などの薬物療法を検討する場合があります。
この病気はどういう経過をたどるのですか?
視床下部性肥満の経過や予後は、その原因となる疾患や視床下部の障害の程度によって異なります。腫瘍が原因の場合、頭蓋咽頭腫や下垂体腫瘍などでは、腫瘍自体の治療成績は改善しています。一方で、治療後も視床下部や下垂体の機能障害が残ることがあり、肥満、ホルモン異常、代謝異常などに対する長期的な管理が必要となる場合があります。視床下部性肥満では、食欲調節機能の障害やエネルギー消費の低下などにより、生活習慣の改善を継続しても体重管理が難しい場合もあります。特に小児期発症例や遺伝性疾患を伴う場合には、長期にわたる包括的な支援が重要です。

