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遺伝性肥満

最終更新日:2026年9月8日NEW

遺伝性肥満とは

肥満(BMI 25 kg/m²以上)の多くは原発性肥満ですが、原因となる病気が明らかなものは「二次性肥満」と呼ばれます。以前は症候性肥満とも呼ばれていましたが、現在では二次性肥満と名称が統一されています。遺伝性肥満には、代表的なものとしてはPrader-Willi症候群、Bardet-Biedl症候群、Alstrom症候群、Carpenter症候群、Cohen症候群、Laurence-Moon症候群などがあります。また、単一遺伝子異常による肥満として、レプチン遺伝子異常、レプチン受容体遺伝子異常、POMC遺伝子異常、MC4R遺伝子異常、PCSK1遺伝子異常などが報告されています。これらの遺伝性肥満は非常にまれですが、幼少期から高度の肥満や著しい食欲亢進を認める場合には疑われます。近年は遺伝学的検査が進歩するとともに、一部の遺伝性肥満に対する新しい治療法も開発されており、早期診断・早期治療の重要性が高まっています。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

遺伝性肥満は、肥満全体の中では非常にまれな病態です。代表的なものとしてPrader-Willi症候群があり、出生約1~1.5万人に1人とされ、日本では約2000人程度の患者さんがいると推定されています。その他にも、Bardet-Biedl症候群、Alström症候群、Carpenter症候群、Cohen症候群などの症候群性の肥満や、レプチン、レプチン受容体、POMC、MC4R(メラノコルチン4受容体)、PCSK1などの遺伝子異常による単一遺伝子性肥満があります。これらは非常にまれですが、幼少期から高度の肥満や強い食欲亢進を認める場合には疑われます。なお、一般的な肥満の多くは、多数の遺伝的要因と環境要因が複雑に関与する多因子性肥満であり、ここで述べる遺伝性肥満とは区別されます。

この病気はどのような人に多いのですか?

遺伝性肥満は、特定の生活習慣によって発症するものではなく、原因となる遺伝子の変化によって発症します。そのため、同じ遺伝子の変化をもつ家族内にみられます。一方で、遺伝性肥満は非常にまれであり、一般的な肥満の多くは、遺伝的な体質に加えて生活習慣や環境要因が複雑に関与して発症します。

この病気の原因はわかっているのですか?

遺伝性肥満では、原因となる染色体異常や遺伝子変異が明らかになっているものがあります。代表的な例として、Prader-Willi症候群では15番染色体q11-q13領域の異常、Bardet-Biedl症候群ではBBS遺伝子群、Alström症候群ではALMS1遺伝子の変異が知られています。また、レプチン、レプチン受容体、POMC、MC4R、PCSK1などの単一遺伝子異常による肥満も報告されています。一方で、遺伝子変異が明らかになっていない症例もあり、すべての遺伝性肥満の原因が解明されているわけではありません。近年、遺伝子解析技術の進歩により新たな原因遺伝子の発見が進んでおり、今後さらに病態の理解や治療法の開発が進むことが期待されています。

この病気は遺伝するのですか?

遺伝性肥満では、原因となる遺伝子の変化が親から子へ受け継がれます。遺伝形式は病気によって異なり、常染色体劣性遺伝を示すものや、単一遺伝子の異常によって発症するものがあります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

遺伝性肥満では、肥満に加えて、発達の遅れ、性腺機能低下、視覚異常など、疾患ごとに特徴的な症状を伴うことがあります。代表的な疾患の特徴を以下に示します。

  1. Prader-Willi症候群: 新生児期から乳児期には筋緊張低下による運動発達の遅れがみられます。成長とともに食欲亢進が目立つようになり、高度肥満を呈することがあります。また、特徴的な顔貌や性腺機能低下を伴い、思春期以降には2型糖尿病を合併することがあります。
  2. Bardet-Biedl症候群: 肥満に加えて、網膜色素変性症、多指症などが特徴です。
  3. Alström症候群: Bardet-Biedl症候群と類似した症状を示しますが、多指症や知的発達の遅れを伴わないことが特徴です。
  4. Carpenter症候群: 尖頭多指癒合症とも呼ばれ、特徴的な頭蓋・顔貌や多指症を認めます。
  5. Cohen症候群: 成長に伴う小頭症や、脈絡網膜ジストロフィー、高度近視などの眼症状が特徴です。

この病気にはどのような治療法がありますか?

遺伝性肥満では、過食傾向や食欲調節機構の異常を踏まえた食事管理と生活環境の調整が治療の基本となります。特にPrader-Willi症候群などでは幼少期から過食傾向が出現するため、肥満が明らかになる前から、規則正しい食事、間食や食べ物の管理など、家族を含めた環境調整が重要です。体重測定と記録を行い、本人だけでなく家族や周囲の支援を得ながら継続的に体重管理を行います。近年では、遺伝子解析の進歩により病態に基づいた治療が可能となりつつあります。特にMC4R経路の異常による一部の遺伝性肥満では、MC4R経路を標的とした治療薬が開発され、海外では使用されています。日本においても、今後これらの治療法の導入が期待されています。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

遺伝性肥満では、疾患によって食欲調節機構の異常や食行動の問題がみられるため、継続的な体重管理を行っていても高度肥満症に進行する場合があります。高度肥満症に伴って、2型糖尿病、心血管疾患、睡眠時無呼吸症候群などを合併し、生命予後に影響することがあります。一方で、原因となる遺伝子異常が明らかになることで、病態に応じた治療が可能となる場合があります。特に先天性レプチン欠損症では、レプチン補充療法により著しい改善が得られ、生命予後の向上につながりました。今後も遺伝子診断と個別化治療の進歩が期待されています。
 

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