2型糖尿病とは
最も多いタイプの糖尿病で、一般的に"糖尿病"と表現した場合2型糖尿病を示す事が多いです。遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンの相対的不足に陥った場合に発症する糖尿病です(図1)。一般的に生活習慣病と称されるタイプの糖尿病が2型糖尿病ですが、インスリン分泌能の低下が不可欠です。ですから生活習慣の乱れだけではなく、2型糖尿病患者さんは大なり小なり糖尿病になりやすい体質(遺伝的素因)を持っているとも言えます。
この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
平成24年の調査で、全国に950万人の糖尿病が強く疑われる人が存在する事が分かっています。そして、そのほとんどが2型糖尿病です。糖尿病患者は世界中で爆発的に増え続け、2014年の調査では3億8,670万人いるとされ、今後有効な対策を施さないと、2035年には5億9,190万人に膨れ上がる事が予測されています。
この病気はどのような人に多いのですか
加齢に伴いインスリン分泌能が低下しますので、成人発症がほとんどです。また、わが国ではやや男性に多い事が知られています。肥満した人に多く発症しますが、肥満していなくてもインスリン感受性が悪い人には発症する可能性もあり注意が必要です。
この病気の原因はわかっているのですか
ゲノムワイド関連解析で、沢山の原因遺伝子が報告されています。中でもKCNQ1は日本人の2型糖尿病発症に非常に強く関連している事が分かっています。これらの遺伝的素因に基づくインスリン分泌能の低下に高脂肪食、過食、運動不足から肥満・インスリン抵抗性が加わり、膵β細胞が代償性にインスリンを十分分泌できなくなると発症します。
この病気は遺伝するのですか
遺伝します。過去の疫学研究では2型糖尿病患者の同胞では2-3倍、両親が2型糖尿病であるとその子供は3-4倍発症します。
この病気ではどのような症状がおきますか
通常症状はありません。高血糖が著明になると、口渇、多飲、多尿、体重減少と言った糖尿病の典型的症状が出現する可能性もあります。
この病気にはどのような治療法がありますか
<インスリン療法>
2型糖尿病でもインスリン分泌能の低下が著しい場合や、著明な高血糖による糖毒性を解除する必要がある場合はインスリン療法の適応となります。
<薬物療法>
図2に示すとおり、インスリン以外にも様々な経口血糖降下薬が2型糖尿病では投与可能ですし、GLP-1受容体作動薬という注射薬も使用可能です。薬剤は薬の作用によってインスリン抵抗性改善系、インスリン分泌促進系、糖吸収・排泄調節系に分類され、多種多様な2型糖尿病の病態に合わせて治療されます。
この病気はどういう経過をたどるのですか
他の糖尿病と同様に、厳格に血糖をコントロールすれば、合併症なく糖尿病ではない人と同じような生活が出来ます。しかし、放置すると腎不全から透析になったり、視力低下や失明したり、下肢の切断に至る場合もあります。また、心筋梗塞や脳梗塞など致死的血管合併症を引き起こすのみならず、最近では癌や認知症とも関連している事が報告されています。症状が乏しいことから、糖尿病は"サイレント・キラー"とも呼ばれています。