はじめに
子宮は伸縮自在の「箱」のような形をした臓器で、その「箱」は大きく分けて「子宮平滑筋」という筋肉組織と「子宮内膜」の二つの組織から出来ています。子宮という「箱」の壁の大部分は子宮平滑筋組織から出来ています。そして、その「箱」の内側は子宮内膜で覆われています。子宮内膜は、子宮に受け入れられた受精卵を直接包み込み、「箱」の中(子宮内腔)で受精卵が胎児と胎盤に育っていくのを支えます。
子宮筋腫とは
子宮筋腫とは、子宮の平滑筋組織から発生する良性腫瘍です。
この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
婦人科の腫瘍のなかで最も高頻度にみられます。30歳以上の女性の20~30%が持っているとされており、顕微鏡検査で認められる微小なものまで含めると約75%に達します。
この病気はどのような人に多いのですか
初経年齢が低い、妊娠回数が少ない、経口避妊薬の服用などが子宮筋腫のリスクを高くさせると言われています。
この病気の原因はわかっているのですか
最近、子宮筋腫の約70%にMED12遺伝子の異常が有ると報告されました。その頻度の高さからも、MED12遺伝子に異常が生じて子宮筋腫が出来るのではないか、と推測されています。
この病気は遺伝するのですか
現時点では、遺伝性の病気ではない、とされています。
この病気ではどのような症状がおきますか
子宮筋腫が出来ている場所、サイズ、個数などにより多彩な症状が現れますが、月経量の過多や月経持続期間の過長などの月経関連症状とそれによる貧血症状、腹部膨満感・下腹痛・頻尿・便秘などの子宮筋腫による圧迫症状が代表的です。また不妊や流早産の原因になることもあります。
この病気にはどのような治療法がありますか
過多月経には止血剤やエストロゲン・プロゲスチン配合剤を用います。その他にも黄体ホルモン[レボノゲストレル]放出子宮内システムやGnRH [ゴナドトロピン放出ホルモン] アゴニスト製剤が月経血量の軽減や子宮筋腫の縮小を図ります。月経症状、圧迫症状、不妊症などの症状を伴う子宮筋腫に対しては、手術療法も考慮されます。妊孕能を温存するためには、子宮筋腫だけを取り除く子宮筋腫核出術が行われます。根治的な手術療法は子宮全摘術になります。その他の治療の選択肢として、子宮内膜焼灼術、子宮動脈塞栓術、MRIガイド下集束超音波療法が有ります。
この病気はどのような経過をたどるのですか
子宮筋腫はエストロゲンとプロゲステロンに依存して進展・増悪していくので、月経が有る間は、子宮筋腫が小さくなることも症状が改善することも通常ありません。閉経すれば子宮筋腫は縮小し、関連する様々な症状は消失あるいは改善されます。稀ですが、子宮筋腫に子宮肉腫という悪性腫瘍が合併あるいは発生することがあります。