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ラトケ嚢胞

最終更新日:2026年7月28日NEW

ラトケ嚢胞とは

ラトケ嚢胞は、胎生期のRathke’s pouch(ラトケ嚢)に由来する組織が残り、その部分に液体がたまって形成される非腫瘍性の嚢胞性病変です。多くは正常下垂体の前葉と後葉の間に生じ、鞍上部に進展し視神経・視交叉・視床下部などを圧迫することがあります。近年では無症候の状態で診断されることが多いですが、重要構造物へ影響を及ぼすと症状が出現したりホルモン異常を来したりします。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

剖検では数%から20%程度に認められたとの報告があり、症状のない小さなラトケ嚢胞は決してまれではありません。近年では脳ドックをはじめとするMRI検査の普及により無症候で診断されるラトケ嚢胞が増えています。これは発症が増えているわけではなく診断率の向上によるものです。このように偶然診断されるラトケ嚢胞は決して少なくありませんが、治療対象になるのは一部です。

この病気はどのような人に多いのですか?

症状を呈して診断される患者さんは女性にやや多く成人に多いとされていますが、若年者から高齢者まで幅広い年齢でみられます。

この病気の原因はわかっているのですか?

上記のような発生過程をとり、遺残組織が原因ではありますが、それが存在していてもラトケ嚢胞が生じる人とそうでない人がいます。根本的な原因は分かっていません。

この病気は遺伝するのですか?

そのような報告は見られず一般的には遺伝しないと理解されています。

この病気ではどのような症状がおきますか?

上記のように無症状のことが多いのですが、症候化した場合の症状としては、視力・視野障害、ホルモン異常、頭痛などがあります。ラトケ嚢胞が大きくなり視神経や視交叉を圧迫すると視力・視野障害を来すことがあります。典型的な視野障害は両耳側(視界の外側)の欠損であり、初期は上方から始まり進行すると下方も見えにくくなり最終的には両耳側半盲の状態になります。

ホルモン異常は、単独~多数のホルモンの分泌低下を来すことがあります。下垂体前葉ホルモン分泌不全、高プロラクチン血症や後葉ホルモン異常である尿崩症があります。原因は嚢胞による正常下垂体の圧迫の場合と、嚢胞は小さくても炎症が正常下垂体に波及して機能低下を来す場合があります。具体的には、全身倦怠感、易疲労感、不妊、性欲低下、成長障害、食欲低下、多尿、口渇感などが見られます。進行すれば多系統のホルモン分泌不全を来します。高プロラクチン血症では月経不順・無月経、不妊を来します。

頭痛では、ラトケ嚢胞がその原因かどうかの見極めが難しいことが少なくありません。

この病気はどのように診断するのですか?

主にMRIによって診断されます。下垂体ホルモンの血液検査を行い、視神経や視交叉の圧迫が疑われる場合には、眼科で視力・視野検査を行います。画像診断では、頭蓋咽頭腫や嚢胞性下垂体腫瘍などのほかの病変との区別が難しいこともあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

無症状でホルモン異常がなければ、通常はMRIなどによる経過観察が行われます。視交叉に接している、あるいは圧迫している場合には、眼科的な視力・視野検査を行い、視機能障害の有無や嚢胞の大きさ・増大傾向などを考慮して、手術または経過観察を選択します。自覚症状がなくても、検査によって視野障害が見つかることがあり、その場合には手術が検討されます。

下垂体機能低下を来している場合には適切なホルモン補充療法を行うことが重要です。明らかな視力・視野障害を来している場合には手術が行われます。

手術は、多くの場合、鼻孔から内視鏡を挿入して嚢胞を開放し、内容液を排出・洗浄する経蝶形骨洞手術が行われます。ラトケ嚢胞による視機能障害は手術によって改善しやすい一方、既存の下垂体機能低下や尿崩症は手術後も残ることが少なくなく、手術によって新たに生じることもあります。手術後に嚢胞が再び出現したり増大したりすることがあるため、手術後もMRIやホルモン検査による経過観察が必要です。画像上再び大きくなっても、症状がなければ直ちに再手術が必要になるとは限りません。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

上記のように、治療適応がない場合には定期的にMRIで経過観察します。ラトケ嚢胞では自然に病変が縮小することがあります。ただしその後再増大することもあるので縮小後もホルモン値とともに定期的な経過観察が必要です。上記のような治療適応に当てはまるようになれば治療を考慮します。

この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

症状がなく、下垂体機能にも異常がなければ、通常の日常生活に特別な制限はありません。ただし、視力・視野の変化、強い頭痛、倦怠感、吐き気、多尿や口渇などが出現した場合には、早めに担当医へ相談してください。ホルモン補充療法を受けている方は、処方された薬を自己判断で中止しないことが重要です。
 

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