原発性肥満とは
肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態をいい、体重(kg)/[身長(m)]2で算出されるbody mass index(BMI)が25kg/m2以上と定義されます。肥満のうち、内分泌疾患や遺伝性疾患、薬剤など明らかな原因がある二次生肥満を除いたものを肥満を原発性肥満と言います。生活習慣、遺伝的素因、環境要因などを背景として、長期間にわたりエネルギー収支が正となることで生じる肥満であり、一般にみられる肥満の大部分がこれに相当します。
この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
令和6年国民健康・栄養調査によると、20歳以上でBMI 25 kg/m²以上の肥満者の割合は、男性32.4%、女性19.3%でした。男性では50~59歳(38.3%)、女性では70歳以上(22.8%)で最も高くなっています。近年は男女とも肥満者の割合はやや増加傾向にあります。なお、この調査はBMIによる「肥満者」の割合を示したものであり、原発性肥満と二次性肥満を区別していません。そのため、原発性肥満に限れば実際の患者数はこの割合より少なくなります。
この病気はどのような人に多いのですか?
肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。しかし、肥満であることだけでは病気とはみなされません。肥満に起因または関連する健康障害を合併している、あるいは将来的にその合併が予測され、医学的に減量が必要と判断される状態を「肥満症」といい、治療の対象となる病気です。肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを長期間上回ることによって生じますが、その背景には、食生活や運動習慣だけでなく、遺伝的な体質、加齢、睡眠不足、ストレス、社会環境、服用中の薬剤など、さまざまな要因が関与しています。そのため、「食べ過ぎ」や「運動不足」だけでは説明できない場合も少なくありません。
この病気の原因はわかっているのですか?
肥満症は、一つの原因だけで起こる病気ではありません。食生活や運動習慣に加え、遺伝的な体質、脳や消化管から分泌される食欲調節ホルモンの働き、睡眠、ストレス、社会環境、服用中の薬剤など、多くの要因が複雑に関与して発症します。このため、現在では肥満症は「多因子からなる慢性疾患」と考えられています。
この病気は遺伝するのですか?
肥満症になりやすさには遺伝的な体質が関係していますが、遺伝だけで決まる病気ではありません。親が肥満だからといって、必ず子どもも肥満になるわけではなく、食生活や運動習慣、睡眠、ストレスなどの生活環境も大きく影響します。遺伝的な体質は、食欲や満腹感、エネルギー消費、脂肪の蓄積などを調節する脳や全身の働きにも影響することが分かってきています。近年の大規模な遺伝子研究により、肥満になりやすさに関係する多くの遺伝子が見つかっています。代表的なものとしてFTO遺伝子などが知られていますが、多くの肥満症は一つの遺伝子だけで説明できるものではなく、多数の遺伝子が少しずつ影響すると考えられています。また最近では、生活環境が遺伝子の働き方に影響を与える「エピゲノム」の研究も進んでおり、肥満症との関連が注目されています。今後、肥満症の発症メカニズムの解明や新しい治療法の開発につながることが期待されています。
この病気ではどのような症状がおきますか?
肥満症では、初期には自覚症状がほとんどないことも少なくありません。しかし、体重増加そのものによる症状や、肥満に伴う健康障害(合併症)によって、さまざまな症状が現れます。代表的には、以下の健康障害があげられています。1)2型糖尿病、2)脂質異常症、3)高血圧、4)高尿酸血症・痛風、5)狭心症・心筋梗塞、6)脳梗塞、7)脂肪肝、8)月経異常・妊娠高血圧症候群、9)睡眠時無呼吸症候群、10)変形性関節症・変形性脊椎症・腰痛症、11)肥満関連腎症。その他にも、胆石症、気管支喘息や皮膚疾患に加えて、大腸がん、乳がん、子宮体がんなど、一部のがんの発症リスクを高めることも知られています。このように肥満症では、体重増加そのものによる症状だけでなく、内臓脂肪の蓄積によって生じるさまざまな健康障害の症状にも注意する必要があります。
この病気にはどのような治療法がありますか?
すべての肥満が治療の対象となるわけではありません。肥満に伴う健康障害(合併症)がある場合や、将来的に健康障害を発症する危険性が高い内臓脂肪型肥満では、「肥満症」として減量治療が勧められます。肥満症は多因子からなる慢性疾患であり、治療の基本は食事療法、運動療法、行動療法による生活習慣の改善です。そのうえで、患者さん一人ひとりの病態や重症度に応じて薬物療法や減量・代謝改善手術を組み合わせます。近年では、食欲を調節するホルモンの働きを利用した肥満症治療薬が保険診療で使用できるようになり、適応のある患者さんに対する新たな治療選択肢となっています。また、一部には一般用医薬品(OTC医薬品)もありますが、使用にあたっては薬剤師などの専門家に相談することが大切です。高度肥満症では、減量・代謝改善手術が有効な場合があります。
この病気はどういう経過をたどるのですか?
肥満症は、多くの場合、長い時間をかけて発症・進行する慢性疾患です。適切な治療を行わないと、肥満に関連した健康障害(合併症)が徐々に進行し、糖尿病や心血管疾患、腎臓病などが悪化して、生命に関わる場合もあります。一方で、適切な治療によって体重を減らし、その状態を維持することで、多くの健康障害は改善または予防することが期待できます。肥満症は、患者さんの意思や自己管理だけでなく、生体の体重調節機構や環境要因が関与する多因子性の慢性疾患です。そのため、病態に応じた治療を無理なく継続し、長期的に体重や健康状態を管理していくことが大切です。

