特発性副甲状腺機能低下症とは
特発性副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の生成低下のためにPTHが低下することによって、低カルシウム血症や高リン血症などの血液異常をきたすものです。近年、特発性副甲状腺機能低下症に関する研究が進むまでは、原因は不明とされていましたが、最近ではいくつかの原因が明らかにされつつあります。
原因は
特発性副甲状腺機能低下症は、副甲状腺機能低下症の中でも原因がはっきりしていないものを指しますが、以下のような原因が明らかになりました。
- 免疫異常(HAM症候群、AIRE遺伝子異常)
- 奇形症候群に伴う副甲状腺の臓器発生の異常(感音性難聴・腎奇形を伴うもの、心奇形・顔貌異常を伴うものなど)
- カルシウム感受性の異常(カルシウム感知受容体異常、原発性低マグネシウム血症)
- PTHの異常
そのほかにも未だに要因が不明のものが多々あり、それらを含めて特発性副甲状腺機能低下症と言われています。
症状は
発性副甲状腺機能低下症の症状は、血中のカルシウム濃度が低下することによって起こるものが主です。低カルシウム血症の症状として、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれん(すべての形)、喉頭けいれん・気管支けいれん、歯牙発育障害などがあります。カルシウムの不足により神経や筋肉の興奮がおこり、テタニー発作というこの病気に典型的な症状が現れます。テタニー発作とは、上述したように手足の指の不随意な収縮のことで、両手指がこわばったり、顔が引きつったり、全身がしびれたりといった"てんかんの発作"に似た状態が見られるのが特徴です。また、情緒不安定になったり、いらいらしたりといった精神面での異常が見られることもあります。 また、低カルシウム血症との関連は必ずしも明らかではありませんが、しばしば認められるものとして、脱毛、皮膚の白斑、カンジダ症、心奇形、顔貌異常、感音性難聴、O脚、X脚などがあります。
検査と診断
血液検査で低カルシウム血症(血清補正値8.5mgdl未満、高リン血症(4.5mgdl以上)があり、インタクトPTHが30pgml以下なら特発性が考えられ、30pgml以上なら偽性が疑われます。確定診断には負荷試験(エルスワース・ハワード試験)を行います。
低カルシウム血症の時に見られる所見としては、クボステック徴候(顎関節部を叩いた時の口輪筋の収縮)、トルーソー徴候(上腕部緊縛による助産婦手位:手関節屈曲、母指内転、中手関節屈曲と指の伸展)、心電図異常(QT延長、AVブロック)、大脳基底核の石灰化などがあります。
治療
特発性副甲状腺機能低下症は、上述したように原因が未だに解明されていない部分が多数残されている疾患であるため、特定の予防法というものは存在しません。低カルシウム血症に伴う様々な症状の頻度や程度に合わせた治療を行っていきます。低カルシウム血症に伴うテタニーやけいれんを起こしている時には、カルシウム製剤を静脈注射により投与します。明らかな症状がなければ、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤などの内服治療が用いられます。これらの薬剤を毎日服用することで血中のカルシウム濃度を調整し続けることによって低カルシウム血症に伴う症状を回避します。
2025年11月より、日本においてもPTH補充療法のための副甲状腺ホルモン製剤が使用可能となり、病因であるPTH欠乏および不足に対応できるようになりました。PTH補充療法は、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤による従来治療が行われている患者を対象に、カルシウムやリンなどの検査値、しびれなどの症状、日常生活の支障の程度に応じて検討されます。また、治療中は低カルシウム血症および高カルシウム血症を避けるとともに、高カルシウム尿症による腎結石の発生を防ぐため、定期的にカルシウム値を測定し、投与量の調整を行う必要があります。

