日本内分泌学会

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成人成長ホルモン(GH)分泌不全症

最終更新日:2019年11月9日

成人GH分泌不全症とは

成人GH分泌不全症とは、成人においてGHの分泌不全により、生活の質(QOL)の低下と体脂肪増加、筋肉・骨塩量減少などの体組成異常および血中脂質高値などの代謝障害を呈し予後が悪化する病気です。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
日本において、患者総数約36,000人、1年あたりに約1,140人の新規患者さんの発症と推測されています。

この病気はどのような人に多いのですか?

小児期に成長障害と診断され成長ホルモン製剤で治療を受けた方、下垂体腫瘍などの頭蓋内器質性疾患のある方あるいは以前治療された方、出生時に逆子や仮死だった方、頭部外傷やくも膜下出血を起こしたことのある方、小児期のがん生存者の方、頭部に放射線を当てた方などでは、GH分泌が障害されやすいことがわかっています。

この病気の原因はわかっているのですか?

下垂体腫瘍などの頭蓋内器質性疾患、出生児の損傷、頭部外傷、くも膜下出血、放射線治療などによる物理的な障害やまれに遺伝性のものがあります。

この病気は遺伝するのですか?

先天性GH分泌不全症の一部で、GH遺伝子、GHRH受容体遺伝子、その他下垂体形成に重要な遺伝子の異常によって引き起こされることがありますが、まれです。遺伝性の場合には多くの場合出生時よりホルモン低下を認めます。

この病気ではどのような症状がおきますか?

疲れやすい、スタミナの低下、集中力低下、気力の低下、うつ状態、性欲の低下などの自覚症状を伴い、生活の質が低下していることがあります。身体所見として皮膚の乾燥と菲薄化、体毛の柔軟化、ウェスト/ヒップ比の増加などを認め、検査所見として体脂肪 (内臓脂肪) の増加、除脂肪体重の減少、骨塩量減少、筋肉量減少、脂質代謝異常、耐糖能異常、脂肪肝(単純性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎など)の増加などがあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

GH製剤を毎日寝る前に注射で投与します。疲れやすい、スタミナの低下、集中力低下、気力の低下、うつ状態、性欲の低下などの自覚症状の改善とともに生活の質の改善と体脂肪が減り筋肉、骨塩量が増えるなどの体組成の改善を認めます。副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンなどGH以外のホルモン分泌が低下している場合には、まずそれらのホルモンの補充を行うことが重要です。GH製剤は妊娠している方や悪性腫瘍がある方には投与しません。また糖尿病も悪化する場合がありますので、注意が必要です。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

原因の疾患によりますが、多くの場合にはGH分泌低下は生涯継続します。GH補充療法をいつまで続ければよいかについて結論は出ていませんが、効果が出ている場合には継続する意義があると考えられます。担当医とよく相談して下さい。

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