日本内分泌学会

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膵・消化管神経内分泌腫瘍 (NEN:neuroendocrine neoplasm)

最終更新日:2019年11月17日

膵・消化管神経内分泌腫瘍とは

神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞を起源とする腫瘍で、その多くが膵・消化管に発生することから、膵・消化管神経内分泌腫瘍(膵・消化管NEN)とも呼ばれます。NENは以前、浸潤発育や転移がない良性腫瘍を意味するカルチノイド(癌様腫あるいは類癌腫)と呼ばれましたが、今では良性から悪性までさまざま経過を示すことが分かっています。

この病気の原因はわかっているのですか

NENは神経内分泌細胞に由来し、頻度の多い腺癌や上皮癌などと腫瘍発生機構や生物学的特性が違うことが分かっています。しかし原因はわかっていません。

この病気の分類について教えて下さい

NENには下の分類があります。

  1. 発生部位:神経内分泌細胞が存在する前腸(肺・気管支、胃、十二指腸、膵臓)注腸(小腸、虫垂、結腸右半)、後腸(結腸左半、直腸)にわけられ、特に膵臓と直腸に多い。
     
  2. 進行度(ステージ)の違い:腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)
     
  3. 悪性度の違い:細胞増殖に関連するKi-67指数や核分裂像の比率を用いて分類(膵臓WHO分類2017、消化管WHO分類2019)
     
  4. 機能性か非機能性か
     
  5. 遺伝性腫瘍かどうか:膵・消化管NETの5-10%が遺伝性と考えられる。なかでも遺伝子異常にともなうNETでは多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)が最も多くMEN1の6割に膵・消化管NETを合併する。

この病気ではどのような症状がおきますか

NENには、ホルモンを産生して症状を示す機能性NENと症状を示さない非機能性NENに分けられます(表)。機能性NETは分泌するホルモンの身体的影響が強く、時には生命の危機をもたらします。神経内分泌腫から分泌される特有の生理活性物質(セロトニン、アミン等)に基づく症状(皮膚紅潮、下痢、腹痛、喘鳴など)をカルチノイド症候群と呼びます。

  主なホルモン 産生ホルモン
インスリノーマ  低血糖症状(冷汗、動悸、めまい、 意識障害、
記憶力低下、異常行動)
インスリン
ガストリノーマ  再発性消化性潰瘍、逆流性食道炎、下痢   ガストリン
グルカゴノーマ 移動性紅斑、糖尿病、体重減少、貧血 グルカゴン
VIPオーマ  水様性下痢、低カリウム血症 VIP
セロトニン産生腫瘍 皮膚潮紅、下痢、喘息、心疾患(カルチノイド症候群) セロトニン、アミン

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

膵・消化管NENは、年間人口10万人に3~5人の新規患者が発生する比較的稀な腫瘍です。機能性膵内分泌腫瘍は、インスリノーマ、ガストリノ−マ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、 VIP産生腫瘍(VIPoma)の順で、最も多いインスリノーマでも、年間人口100万人に1~4人の新規発生とされています。

この病気にはどのような治療法がありますか

NENの治療の第1選択は①原発腫瘍の切除ですが、他に②薬物療法(ソマトスタチンアナログ、エベロリムス、スニチニブ、ストレプトゾトシンなど)、③遠隔転移に対する治療(肝臓のカテーテル塞栓術、ラジオ波焼灼術等)があります。Ki67指数と核分裂数という腫瘍細胞の増殖を反映する指標を用いたGrade分類が、臨床的経過とよく相関するとされ、2010年、Grade分類に基づく病理組織学的分類が作られました。NET患者の治療では、病理組織学的分類に基づいて治療することが重要です。

参照:膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN) 診療ガイドライン2019年第2版、金原出版、2019年

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