動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド2013年版 日本動脈硬化学会編 77-78頁引用改変
病態と成因
- 家族性複合型高脂血症は、最も頻度の多い遺伝的な高脂血症です。
- IIb型(LDL、VLDL リポ蛋白が増加)の高脂血症を基盤とするが、食事などの影響でIIa型(LDLリポ蛋白が増加)やIV型(VLDL リポ蛋白が増加)にも変動します。家族の表現型も一定ではなく、IIa、IIb、IV型の種々の表 現型を呈しうります。食事療法に対する反応性が良い点が特徴です。
- 遺伝形式は単一遺伝子異常に基づくものではなく多因子疾患であることが示唆されています。頻度は約100人に1例程度と極めて高く、肥満は必ずしも伴いません。
- 高脂血症は思春期以降の発症が多いが、幼児期から出現する場合もあります。
- LDL-C値の上昇は、家族性高コレステロール血症より軽度です。冠動脈疾患の合併は家族性高コレステロール血症ほどではないが頻度は高いです。アキレス腱肥厚を含め黄色腫は認められません。
- 肝臓でのVLDLの合成過剰を基盤として、LDL-Cに比しアポ蛋白B100が相対的に過剰で、LDLが中性脂肪に富み小粒子化(small dense LDL、LDL粒子径<25.5 nm)します。
- 成因としては、アポ蛋白B100の合成亢進、VLDLの肝臓からの過剰分泌、LPLの活性低下、内臓脂肪の蓄積などが発症要因と考えられており、LPL遺伝子、アポ蛋白C-II遺伝子、アポ蛋白A-I/C-III/A-IV遺伝子群などの遺伝子多型との関連も報告されていますが、確定的なものはありません。過栄養などの後天的要因に対して、脂質異常症が誘発されやすい何らかの遺伝子多型が存在するとも考えられます。
診 断
診断には高脂血症の表現型のIIa、IIb、IV型の混在を家系調査で証明することが必要でしたが、原発性高脂血症調査研究班の診断基準(表1)では特徴的なリポ蛋白像 (hyper-apo B100あるいはsmall dense LDL)を基本にして診断することになりました。
治 療
治療は家族性高コレステロール血症に準じますが、生活習慣の改善が重要であり、食事・運動療法や薬物療法の効果は家族性高コレステロール血症よりも大きいです。
薬物療法として、スタチン、エゼチミブ、フィブラート系薬やニコチン酸誘導体が有効です。