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膵性糖尿病

最終更新日:2019年11月9日

膵性糖尿病

なんらかの膵臓の疾患に伴い、インスリン分泌能が低下し、糖尿病を発症する症例を膵性糖尿病と呼びます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

2005年の疫学調査では、膵性糖尿病は、人口10万人あたり15.2人で、成因は慢性膵炎40.0%、膵癌24.6%、膵切除後10.2%、急性膵炎7.5%、自己免疫性膵炎6.1%の順でした。

この病気はどのような人に多いのですか

膵臓に何らかの疾患がある人に起こる糖尿病で、成因は急性・慢性膵炎、膵癌、粘液産生腫瘍、先天性膵形成不全などがあります。2002年の調査では慢性膵炎患者957例の38.1%が糖尿病を合併し、原因としてアルコール性67.8%、特発性25.6%、胆石性4.9%で、飲酒はアルコール膵炎における糖尿病発症の危険因子であることが分かりました。また、慢性石灰化膵炎では70-80% と高率に膵性糖尿病を発症します。膵癌も高率に糖尿病を発症します。糖尿病と癌の合併は近年注目されており、特に膵癌は糖尿病患者では非糖尿病者の約2倍の発症率であることが報告されています。

この病気の原因はわかっているのですか

膵性糖尿病患者は、インスリン分泌不全が病態の中心で、やせている人に多い事が特徴です。進行するとインスリン分泌のみならず、グルカゴン分泌も低下するため容易に低血糖になってしまうというジレンマがあります。慢性膵炎では膵外分泌組織の委縮、脱落、間質組織の線維化などによる膵外分泌機能の低下が直接的あるいは血流障害を介して膵ランゲルハンス島も障害し、インスリン分泌不全を引き起こします。癌による膵島の破壊や膵管閉鎖に伴う膵炎のみならず、インスリン抵抗性を惹起する事も報告されています。

この病気は遺伝するのですか

通常は遺伝しません。

この病気ではどのような症状がおきますか

概ね1型糖尿病のような症候を示し、糖尿病の典型的な症状といわれる口渇、多飲、多尿、体重減少がよくある症状です。また、膵性糖尿病の患者は痩せ型が多く、膵外分泌腺の機能不全に伴う吸収不良や下痢を呈する事があります。

この病気にはどのような治療法がありますか

<インスリン療法>
基本的には1型糖尿病に準じて強化インスリン療法が適応です。軽症例では経口血糖降下薬が有効な事もありますが、インスリン依存状態に容易に陥る可能性がありますので、注意が必要です。また、先述のとおり低血糖になりやすい特徴がありますので、ブドウ糖を常備する必要があります。

<膵外分泌酵素の補充>
膵臓から分泌される消化酵素が不足し、消化吸収障害を併発する例では、パンクレリパーゼ(リパクレオン)をはじめとした消化酵素の補充も必要な場合があります。

この病気はどういう経過をたどるのですか

他の糖尿病同様、良好な血糖コントロールが得られれば問題ありませんが、血糖コントロールが不十分ですと他の糖尿病同様の合併症が出現します。

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