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ターナー症候群

最終更新日:2019年11月9日

ターナー症候群とはどんな疾患ですか?

ターナー症候群は、染色体が多くの女性と少し異なるために起こる、生まれつきの体質です。ターナー症候群は女性にのみ起こり、後に示すような特徴をもっています。 生まれつきの体質であり、後天的になることはありません。ただし、症状の程度や表面化してくる時期が人によって異なり、生まれた時にはわからなくても、後になってターナー症候群とわかる場合があります。

ターナー症候群はどうしておこりますか?

染色体は、人間の細胞ひとつひとつにあり、遺伝情報を持つ設計図をしまっておく"入れ物"です。多くの人は1つの細胞に46個の箱(すなわち46本の染色体)を持っています。染色体のうち2本は性染色体と言われ、多くの女性はX染色体を2本持っています。ターナー症候群の女性は、2本のX染色体のうち1本の全体または一部が欠失しています。

染色体は1本、2本と数えます。

ターナー症候群の特徴はなんでしょうか?

すべてのターナー症候群の女性に以下の特徴を認めるわけではありませんが、複数の特徴を持っていることが多いです。また、特徴の程度も人によって異なります。

  1. 低身長:ターナー症候群の女児の出生時の身長は平均約47cmで、ターナー症候群ではない女児と比べるとおよそ2cm小さいです。多くはその後の身長の伸びが小さく、3歳ごろから一般集団に比べて小さいことが目立ち始めます。思春期時期の身長増加も小さく、無治療の場合、大人になったときの身長は138cm前後となります。
     
  2. 二次性徴が現れないことが多い:一般的な女性は、平均10~12歳ごろに乳房が膨らんだり、月経がはじまったりします。これは二次性徴と呼ばれ、卵巣から血液中に分泌される女性ホルモンの働きによりおこります。ターナー症候群の女性では、卵巣の機能が弱いことが多く、二次性徴は起こらないか、乳房が膨らんだのみで月経が来ないなどのように不完全です。
     
  3. 身体的な特徴:首から肩にかける皮膚にたるみがある(翼状頚とよびます)、肘から先の腕が外に離れる(外反肘とよびます)、背中側の髪の毛の生え際が低い、手足の甲がむくむ、などの特徴があります。
     
  4. 知的面:一般的にターナー症候群の女性は、知的に正常で、まじめな性格の人が多いです。算数(図形)や体育が苦手など、得意不得意は存在しますが、ゆっくり時間をかければ、理解できるようになります。ただし、一部のターナー症候群の女性では知的障害を伴うこともあります。

ターナー症候群に起こりやすい合併症はありますか?

ターナー症候群の女性は以下の合併症を認める場合がありますが、多くの方は日常生活を過ごすことが十分に可能です。また、起こりやすい合併症を早期発見できれば、症状の出現や進行を食い止めることが可能な場合もあります。診断がついた時やその後の定期的な受診の時に、超音波検査や血液検査などをしていただくことが望まれます。

  1. 生まれつきの合併症:約20%の人が生まれつき心臓や大血管の問題を持っており、心臓から出る大きな血管が途中で一部細くなっているもの(大動脈縮窄とよびます)や、定型的ではない大動脈弁が多いとされています。また、ターナー症候群の女性では、腎臓の形態が通常と異なる場合があります。どちらも超音波検査で診断可能です。
     
  2. 乳幼児期から小児期の合併症:ターナー症候群では、中耳炎になりやすいといわれています。中耳炎をくり返すと難聴を発症することがあるため、注意が必要です。
     
  3. 成人期の合併症:肥満・糖尿病・甲状腺ホルモン分泌低下・骨粗鬆症といった合併症が出てくる可能性があります。生活習慣への配慮やホルモン補充による治療を行います。またターナー症候群の99%以上の方が不妊です。通常の不妊治療で妊娠に至ることは残念ながらほとんどありません。

ターナー症候群はどのように診断されますか?

身長が低いことや思春期が遅いこと、あるいは不妊からターナー症候群が疑われることがあります。ターナー症候群の可能性を疑われた場合には、血液を用いて染色体検査を行います。X染色体の1本の全体または一部が欠失していた場合、ターナー症候群の診断が確定します。

ターナー症候群の治療はなんでしょうか?

染色体そのものを変えることはできないので、ターナー症候群をおおもとから治してしまう治療はありません。治療はそれぞれの症状に対する対症療法が中心となります。 低身長に対しては成長ホルモンの注射を行います。診断がついたときに既に身長が低い際にはすぐに成長ホルモン治療を開始します。現在成長ホルモン治療を受けた成人ターナー症候群の平均身長は約145cm以上となっています。

二次性徴が現れないことに対して、女性ホルモンの投与を行います。10~14歳頃から開始し、段階的に女性ホルモンを増量します。思春期年齢以降になると、2種類の薬により、ターナー症候群ではない女性と同じように、月に1回定期的な月経がくるようにする治療が一般的です。

そのほかの合併症に対しても必要に応じてそれぞれ治療を行います。 ホルモンの分泌への配慮が必要な体質で、長期にわたる適切な管理を受けていただくとよいと思います。

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