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小児1型糖尿病

最終更新日:2019年11月9日

小児1型糖尿病とはどんな病気ですか?

1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が壊れることによって、その細胞が作っているインスリンというホルモンがほとんど分泌されなくなる病気です。主に、自己免疫学的機序**により生じます。ウイルス感染の関与も言われていますが詳しい原因は完全にはわかっていません。1型糖尿病は、小児期に多く発症しますので、とくに小児1型糖尿病と呼ばれます。

膵臓のβ細胞:膵臓の中でインスリンを作り、血中に分泌する細胞です。
**自己免疫学的機序:何らかのきっかけで自分自身の細胞を標的にして殺してしまう、本来おきるはずのない免疫反応がおきてしまうことです。

インスリンとはどんなホルモンですか?

インスリンは、食べ物をエネルギーに変える過程で、食べ物由来のブドウ糖を筋肉や脳などの細胞の中にとりこむために必要なホルモンです。インスリンが不足すると細胞の中にブドウ糖をとりこむことができなくなり、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなります。インスリンは、睡眠中や空腹のときにも絶えず分泌されており(基礎分泌と呼びます)、また食事やおやつを摂るたびに直ちに分泌されます(追加分泌と呼びます)。

小児1型糖尿病の症状にはどんなものがありますか?

インスリンの絶対的な不足が続くと、高い血糖値を薄めようとするように、のどが渇く、たくさんの水を飲む、尿量が多くなる(多尿といいます)、などの症状が出ます。多尿は、幼児期では、おねしょ、おもらしの出現や増加、学童期以降では、夜、トイレに起きるようになること(夜間排尿)で気づかれることもあります。また食べ物をエネルギーに変えることが難しくなるために、やせる(体重減少)、元気がなくなる、疲れやすくなるといった症状が出ます。
インスリン不足がさらに進むと、"糖尿病ケトアシドーシス"という危険な状態となります。はき気、嘔吐、腹痛、大きく深い呼吸、意識障害(昏睡)などの症状が現れます。
小児1型糖尿病の一部では、ごく病初期のためにまだ血糖値がそれほど高くなっておらず、全く症状がないこともあります。幼稚園や学校での集団検尿で偶然、尿糖陽性(高くなった血液中の糖が尿に溢れて出てくるためです)として発見される場合もあります。

小児1型糖尿病の合併症にはどんなものがありますか?

血糖値が高い状態が持続すると、数年~十数年の経過で合併症が生じます。失明(糖尿病網膜症とよびます)したり、腎不全となり透析をしなければならなくなったり(糖尿病腎症とよびます)、痛みを感じにくくなったり(糖尿病神経障害とよびます)します。痛みを感じなくなると、けがをしても全く気が付かないので、通常ではおこりえないような大きなけがをすることもあります。また大人になると、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、歯周病、感染症などになりやすくなることもあります。
ただし、適切な治療がされれば合併症を過度に心配する必要はありません。

小児1型糖尿病の診断はどのようにするのですか?

診断は、特徴的な症状、および、血糖値やその関連指標(ヘモグロビンA1cなど)をもとに行います。また、膵臓のβ細胞が自己免疫反応によって破壊されたかどうかを調べるために、膵自己抗体とよばれる物質の有無を血液検査で調べます。

ヘモグロビンA1c:ヘモグロビンが糖と結合した物質です。ヘモグロビンが糖が結合すると、約120日間血液中に安定して存在します。そこで、ヘモグロビンA1cを調べることで過去1カ月程度の血糖値の状態がわかります。

小児1型糖尿病の治療はどのようにするのですか?

治療の基本は、不足したインスリンを注射で補うインスリン療法です。生活スタイルに合わせ、しっかりと治療できれば、健常な子どもに近い血糖値にすることが可能であり、日常生活、学校生活にも特別な制限は必要ありません。

インスリン製剤にはさまざまの種類があります。また、注射法として、基礎インスリン注射(健常な子どもの基礎分泌に相当します)と、追加インスリン注射(健常な子どもの追加分泌に相当します)の組み合わせにより、1日2回~5回注射します。インスリンポンプを用いて健常の子どもにより近い血糖値にすることもできます。
食事療法や運動療法も、インスリンの必要量を減らしたり効き目をよくしたりするために重要です。食事の基本は、バランスよい食事を適量摂取することです。

インスリンポンプ:携帯型のインスリン注入ポンプ(スマートフォンより少し大きいくらいの機械です)を用いて、インスリンを皮下に持続的に注入します。

小児1型糖尿病における小児期の発達段階による特性と、それに応じた治療やサポートにはどんなものがありますか?

乳幼児期は、血糖変動が大きくなりやすく、またインスリン治療による低血糖の症状を本人が訴えにくいなどの特性がある時期です。治療の主体は家族にあります。子どもがインスリン注射を嫌がったり、また食事の食べむらがあったりすることに対するサポートも必要になります。学童期は、学校など家庭外の活動が増加し、本人による治療の自己管理が本格的にスタートする時期です。学校での注射や、低血糖を防ぐための補食、学校行事などへの対応のサポートが必要になります。思春期は、心身共に不安定になりやすい時期です。血糖値の変動も大きくなる特性があります。治療の主体は本人にありますが、さらなる自立のためのサポートが必要です。
このように小児1型糖尿病のサポートの内容は年齢とともに大きく変化します。小児1型糖尿病は、小児期の発達段階を理解した専門医のもとで、しっかり治療を続けることが重要です。

低血糖:血糖が下がりすぎると、汗をかく、意識がもうろうとする、などの症状がでます。高インスリン血性低血糖症の項も参照してください。

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