日本内分泌学会

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成長ホルモン分泌不全性低身長症

最終更新日:2019年11月9日

成長ホルモンとは何ですか?

骨の長さがながくなること、すなわち身長が伸びることに最も重要なホルモンです。下垂体という脳の一部分で作られて、血液の中に分泌されています。

低身長はどのように診断しますか?

低身長は、同性・同年齢の平均身長より2標準偏差*を下回る身長のことです。子どもの身長も人種によって異なることが知られています。日本人で低身長かどうかを判断する場合は、日本人男児成長曲線**または日本人女児成長曲線を用います。評価時年齢の身長を成長曲線上にプロットし、平均より2標準偏差下の曲線と比較します。身長をプロットした点が、平均より2標準偏差下の曲線よりも下に位置する場合に、低身長と判断されます。注意点としては、低身長であるということは病気であることや治療が必要であることを確定するわけではないということです。一般小児の2-3%は低身長と判断されますが、低身長と判断される子どもたちの90%以上に治療が必要な疾患は見つかりません。

*標準偏差:データの散らばりの度合いを示す、統計処理でよく用いる値です
**成長曲線:横軸が年齢(歳)、縦軸が身長(cm)のグラフに日本人小児の標準的な身長の伸びを表した曲線です。日本小児内分泌学会のホームページから簡単にダウンロードできます。

低身長の原因は何ですか?

身長は、頭から踵までに存在するそれぞれの骨の長さの合計と考えることができます。骨の長さに関係するさまざまの要因が、身長に関係する要因です。骨の長さに関係する要因のうち、特に大事な要因は、骨そのものの生まれつきの性質や、骨が長くなることに必要なホルモン(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、などです)、栄養、などです。これらの要因に問題があると低身長になります。一方で、生まれつきの何らかの疾患による低身長、小さく生まれたことを克服できないための低身長、原因がはっきりしない低身長などもあります。

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは何ですか?

下垂体から成長ホルモンを分泌する力が弱いことによって低身長となっている状態です。

成長ホルモン分泌不全性低身長症はどのように診断しますか?

成長ホルモン分泌が弱いことを確認するためには、成長ホルモン分泌刺激試験を行います。成長ホルモン分泌刺激試験とは、投与(静脈注射したり、薬を飲んだりします)された薬に反応して、成長ホルモンがどの程度分泌されるかを調べる検査です。成長ホルモン分泌刺激試験に使う薬は数種類あります。成長ホルモン分泌刺激試験の1つの例として、アルギニン負荷試験の実際を図1に示します。アルギニン負荷試験は2時間にわたる検査で、アルギニン投与前(=0分)に1回目の採血を行い、そこから体重に合わせたアルギニンを点滴で30分間にわたってゆっくり投与します。投与終了直後(=30分)、60分、90分、120分で採血を行います。合計5回採血することになりますが、通常は点滴を用いて検査を行いますので、実際に腕に針を刺すのは1回のみです。成長ホルモン分泌不全を確実に診断するためには、少なくとも2種類の薬で検査を行い、そのすべての検査で、成長ホルモンを分泌する力が弱いことを確認する必要があります。

図1:アルギニン負荷試験の実際

成長ホルモン分泌不全性低身長症の原因は何ですか?

先天的な原因には、生まれつき下垂体の発達が悪い場合などがあげられます。後天的な原因には、下垂体の腫瘍などがあります。ほとんどの後天的な成長ホルモン分泌不全性低身長症の原因は不明(特発性とよばれます)です。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療はどのようなものですか?

自宅で週6-7回成長ホルモンを夜寝る前に皮下注射します。成長ホルモン治療中は、治療の効果が現れているかと、副作用がないかとの両方に注意する必要があります。具体的には、定期的な身体測定と診察に加えて、血液・尿検査などを行います。 高額な成長ホルモン治療に際し、一定の基準を満たすことにより、小児慢性特定疾患事業とよばれる医療費助成制度を利用することもできます。

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