日本内分泌学会

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子宮内膜症

最終更新日:2019年11月9日

はじめに

子宮は伸縮自在の「箱」のような形をした臓器で、その「箱」は大きく分けて「子宮平滑筋」という筋肉組織と「子宮内膜」の二つの組織から出来ています。子宮という「箱」の壁の大部分は子宮平滑筋組織から出来ています。そして、その「箱」の内側は子宮内膜で覆われています。子宮内膜は、子宮に受け入れられた受精卵を直接包み込み、「箱」の中(子宮内腔)で受精卵が胎児と胎盤に育っていくのを支えます。

子宮内膜症とは

上述した子宮内膜(あるいはそれに似た組織)が、子宮以外の場所(異所性)に存在することにより、様々な症状や障害が引き起こされる病気です。最も多い発生部位は骨盤腹膜や卵巣ですが、骨盤内の様々な臓器(膀胱、尿管、直腸、S状結腸、虫垂、卵管など)に加えて、骨盤外の様々な臓器や部位(外陰部、臍、肺、胸膜、手術創、腎臓)にもみられることがあります。

月経時に内膜症病変においても出血が起こるため、それによる炎症や骨盤内臓器同士の癒着が起こります。また卵巣に子宮内膜症が発生すると、月経毎に出血が卵巣内に貯まり卵巣嚢腫が出来ます。この卵巣嚢腫の内容物は古い血液のためチョコレート様の液体となり、チョコレート嚢腫とも呼ばれています。

子宮内腔ではなく子宮の壁(子宮平滑筋)の中に子宮内膜様の組織が存在するものを、子宮腺筋症と言います。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

生殖年齢の女性(思春期~閉経期)の5~10%が子宮内膜症を持っていると言われています。

この病気はどのような人に多いのですか?

月経痛の強い方、特に思春期以降月経痛がだんだんひどくなって来た方は子宮内膜症の可能性が高いです。便通の異常、下血、喀血などの症状が月経時に出現あるいは増強する場合も子宮内膜症が疑われます。

この病気の原因はわかっているのですか?

月経血の大部分は、腟を通じて体外に排出されますが、一部は卵管を通じて、お腹の中(骨盤内)に逆流します。月経血中に存在する剥脱した子宮内膜組織や細胞が、この逆流月経血とともに骨盤内に運ばれ、骨盤内の臓器や組織に付着し育つことで、子宮内膜症になると言われています。これを月経逆流説と言い、現在最も有力な原因仮説です。その他にも化生説、転移説、幹細胞説などがあります。一つの説だけで、子宮内膜症の全てを説明することは出来ません。

この病気は遺伝するのですか?

現時点では、遺伝性の病気ではない、とされています。ただし、子宮内膜症になりやすい体質が遺伝する可能性は指摘されています。

この病気ではどのような症状がおきますか?

月経時の下腹痛や腰痛などの月経痛、月経時以外の下腹部痛や腰痛、また性交痛や排便痛などの疼痛症状が主体です。半数の方には、不妊症も引き起こします。その他、腸、膀胱、あるいは肺などの様々な臓器に広がった場合は、便通の異常、下血、血尿、喀血などの症状が月経時に出現あるいは増強することがあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

月経痛などの疼痛に対しては、非ステロイド系消炎鎮痛剤が先ず用いられます。鎮痛剤が無効の場合など状況に応じて、様々なホルモン剤(プロゲスチン製剤、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤、GnRH [ゴナドトロピン放出ホルモン] アゴニスト製剤、ダナゾールなど)による薬物療法や病変を摘出・焼灼あるいは癒着を剥離する手術が行われます。なお、不妊症に対しては、原則として薬物療法は行われません。不妊症には手術も考慮されますが、特にチョコレート嚢腫の場合は、嚢腫摘出手術により卵巣機能が低下する可能性が有るなどの理由から、体外受精などの生殖補助医療が優先的に行われることも多いです。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

子宮内膜症はエストロゲンというホルモンで進展・増悪しますので、月経がある限り、多くの内膜症は進行します。特に卵巣ではしばしばチョコレート嚢胞が出来て、子宮、卵巣、卵管、腸管などとの間で癒着が生じ、最終的には骨盤内のスペースが消失するほど骨盤内臓器の癒着がひどくなることもあります。ただし、閉経すれば内膜症の病勢は止まるので、関連する様々な症状は消失あるいは改善されます。

一定のサイズを超える卵巣チョコレート嚢胞は稀に癌化することがあるので、症状が無くても手術で摘出するか定期的なフォローアップが必要になります。

 

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