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男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)

最終更新日:2022年10月18日

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)とは

病気ではないのに、中高年男性で「なんとなく不調」「突然のほてりや発汗」などが続けば、男性更年期のトラブルかもしれません。女性特有と思われがちな更年期の症状は男性にもあり、"性ホルモン"の低下やバランスの乱れが原因とされています。

女性の更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に慣れて症状は治まっていきます。

男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。(図1)

減少の速さや度合い、時期は個人差が大きく、したがって女性と似た更年期症状が男性では、40歳代以降どの年代でも起こる可能性があります。ただし図2に示すように男性と女性の更年期症状には違いがあり、男性ホルモンの減少によるものを、加齢性腺機能低下症、またはLOH症候群と呼んでいます。


男性ホルモンの減少により、図3のような身体、精神、性機能の症状が現れます。表1の質問紙で簡単に更年期障害をチェックできます。

男性ホルモンは、いわゆる筋骨隆々の肉体や性機能だけに働くのではなく、認知機能や血管の健康にも関係しています。男性ホルモンの力を維持することが中高年男性の健康を守るカギとなるでしょう。男性ホルモンの減少は、ストレスや睡眠不足などの影響を受けるため、生活習慣の改善が症状回復につながります。

男性ホルモンの減少は生活習慣病に関係

男性ホルモン(テストステロン)の減少で起こる代表的な症状にED(勃起障害)があります。60歳代の日本人の60%以上にみられ、珍しいことではありません。女性は閉経によって生殖機能の終わりを迎えますが、男性はその終わりがなく、80歳、90歳になっても勃起します。EDは、かつては気のもちようだとか、糖尿病などの生活習慣病が悪化して起こるとされてきましたが、近年"血管病"としてもとらえられています。それは、勃起のメカニズムが、血管の機能と深く関係があり、血管の健康が失われる(動脈硬化が進み、血流が悪くなる)とEDが起こりやすくなるためです。陰茎の動脈は非常に細いため初期の動脈硬化でも影響が現れやすく、EDは"最初に自覚できる生活習慣病"だと考えられます。性欲のあるなしに関わらず、EDは男性の健康の"見張り役"になるわけです。

加齢男性で男性ホルモン(テストステロン)値が低い場合、抑うつ状態、性機能・認知機能の低下だけでなく、糖尿病や肥満、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、心血管疾患(動脈硬化・血管内皮機能の低下)などに関係するとの研究結果や、男性ホルモン(テストステロン)値の高い人のほうが長寿という報告もあります。また、男性ホルモンの減少は認知症やサルコペニア(筋肉減少症)とも関連します。

男性ホルモンは多くの病気のリスクから身を守ってくれる、健康長寿のための大事な相棒といえそうです。

男性ホルモンは男性の健康維持に働いています。もし男性更年期障害やEDを自覚されたら、生活を見直し、改善するのはもちろん、定期的に健康診断や、前立腺腫瘍マーカー検査(PSA検査)を受けるなど、ご自身の健康に、よりいっそう気遣うようにしましょう。

男性更年期障害の治療

体調が悪く、血液検査で男性ホルモンが低い場合には加齢性腺機能低下症と診断されます。職場などのストレスのチェックや睡眠、運動や食事の習慣の改善で症状は改善します。漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などが処方されることもあります。著しく男性ホルモンの値が低く、症状が強いときには、テストステロン補充療法を行います。保険治療としてはテストステロンの筋肉注射を2から4週間おきに症状が改善するまで行います。

 

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