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転移性下垂体腫瘍

最終更新日:2019年11月9日

転移性下垂体腫瘍とは

転移性下垂体腫瘍は、がん細胞が「下垂体」と呼ばれるホルモンを分泌する器官に転移する病気です。最近ではがん患者さんの生命予後が改善しているため、無症候性も含めて発見される例が増えています。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

トルコ鞍の近くに発生する腫瘍の中で、転移性下垂体腫瘍の占める割合は約1%と言われています。しかしながら、がん闘病中の患者さんの約5%に下垂体への転移を認めるとの報告もあり、実際の患者数ははるかに多いことが推測されます。

この病気はどのような人に多いのですか?

2015年に報告された全国調査の結果では、患者さんの平均年齢は59歳で、やや男性に多く認められました。肺癌からの転移が最も多く、次いで乳癌、腎癌の順でした。がんの既往がなく、下垂体病変がきっかけでがんが見つかることも稀ではありません。

この病気ではどのような症状がおきますか?

初発症状として40~75%の患者さんに多尿が認められます。腫瘍が上方に進展すると、眼の神経を圧排し、視力や視野が障害されます。下垂体ホルモンの分泌が障害されると、倦怠感や活動性の低下など多彩な症状が現れますが、がんの進行に伴う全身の衰弱と間違われることがありますので注意が必要です。

この病気にはどのような治療法がありますか?

下垂体機能障害を合併する患者さんには、まず適切なホルモン補充を行います。進行性の視力・視野障害があって、かつ全身状態が良好であれば、鼻腔、もしくは上唇の下からアプローチする経蝶形骨洞手術(ハーディ手術)を検討します。転移性下垂体腫瘍の内部は線維性で硬く、手術で腫瘍のすべてを摘出することは困難ですので、診断を確定することと視神経への圧迫を解除することを目指します。その後、放射線照射を追加することで、腫瘍の増殖を抑えます。脳全体に放射線を照射するのか、ガンマナイフ、サイバーナイフなどの定位放射線治療を行うのかは、脳内のほかに転移巣があるかどうか、また全身状態によって異なります。転移巣が下垂体に限局されているのであれば、一般に定位放射線治療が選択されます。また、原発巣によっては化学療法も併用されます。治療の内容は原疾患の担当医と綿密に相談しながら検討することになります。

この病気はどのような経過をたどるのでしょうか?

転移性下垂体腫瘍には放射線治療が有効ですが、予後は原疾患により大きく異なります。原発巣をいかにコントロールするかが、最も重要なことと言えます。

 

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