日本内分泌学会

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下垂体卒中

最終更新日:2019年11月9日

「下垂体卒中」とはどのような病気ですか?

「脳卒中」とは、脳の血管が詰まったり(梗塞)、切れたり(出血)して、頭痛、意識障害、手足の麻痺、言語障害などの症状があらわれる病気です。下垂体卒中とは、下垂体腺腫のなかに梗塞や出血が起こり、膨らんで大きくなった結果、脳卒中と同じような突然の激しい頭痛や視力低下、吐き気、嘔吐、複視(物が2重にみえる)、眼瞼下垂(まぶたが閉じる)、意識障害などの症状が起きる病気です。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

頻度はいろいろな報告がありますが、下垂体腺腫を持っている人のうち2~28%に起こると言われています。症状がまったくなくて、CTやMRIの検査で偶然にみつかる無症候性下垂体卒中とよばれるものも含めれば、その頻度は約半数となります。

この病気はどのような人に多いのですか?

下垂体腺腫を持っている人にみられますが、なかでもプロラクチノーマや非機能性腺腫に起こりやすいといわれています。下垂体腺腫以外にも、頭蓋咽頭腫やラトケ嚢胞などの病気や、妊娠・出産に伴う場合もあります。

この病気の原因はわかっているのですか?

妊娠や下垂体負荷試験(下垂体機能を調べる検査)、また、抗凝固療法、更年期障害の治療、不妊症の治療、前立腺がんの治療などに使われる一部の薬が誘因となることもあります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

典型的な場合は、『「下垂体卒中」とはどのような病気ですか?』 に記載したような症状がみられます。下垂体の周りには、視神経や眼球を動かす神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)などがあるため、下垂体卒中を起こすと下垂体腺腫が大きくなって、それらが圧迫され、視力・視野障害、複視(片方の眼の動きが悪くなるために起きる)や眼瞼下垂がおこります。また、正常な下垂体組織が障害を受けて下垂体機能低下症をきたすことがあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

意識障害あるいは視力・視野障害が急激に進行する場合は緊急手術が必要となります。脳神経外科で手術を行いますが、通常の開頭術ではなく、鼻の穴から下垂体腺腫および梗塞あるいは出血の部分を摘出します。経鼻的下垂体腫瘍摘出術とよばれるもので、最近では、この手術に内視鏡を使う医療機関が増えてきております。眼球運動障害のみであれば必ずしも緊急手術を必要としません。下垂体機能低下症に伴って二次的に副腎皮質機能低下症や甲状腺機能低下症が起こった場合にはステロイドや甲状腺ホルモンの薬を飲んだり、注射したりする(ホルモン補充)必要があります。特に、副腎皮質機能低下症では、できるだけ早期にホルモン補充を必要とします。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

下垂体卒中は、適切な治療によって良好な経過をたどることが多いので、早く病院を受診することが大切です。約8割で視力・視野障害が改善し、眼球運動障害は約9割の症例で改善するといわれています。

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