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神経性やせ症

最終更新日:2026年9月8日NEW

神経性やせ症とは

神経性やせ症(anorexia nervosa:AN)は、摂食障害の一つです。病名の anorexia は「食欲がない」という意味ですが、実際には多くの患者さんで食欲が失われているわけではなく、太ることへの強い不安や、やせたいという気持ちから食事を極端に制限するなどの食行動異常がみられます。また、やせていても自分を太っていると感じるなど、身体の見え方(ボディイメージ)のゆがみを伴うことも特徴です。病気が進行すると、低栄養によるさまざまな身体的合併症に加えて、心理的・社会的な問題も深刻となり、日常生活や学業・仕事に大きな支障をきたすことがあります。なお、本疾患は「拒食症」と呼ばれることもありますが、現在では正式病名である「神経性やせ症」が広く用いられています。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

国立精神・神経医療研究センターなどの報告では、女子高校生における神経性やせ症の有病率は0.19~0.56%とされ、日本における代表的な疫学データの一つです。一般人口では頻度の高い病気ではありませんが、思春期から青年期の女性に多くみられる重要な疾患です。

この病気はどのような人に多いのですか?

神経性やせ症は、思春期から青年期に発症することが多く、患者の多くは女性です。従来は女性に多い疾患と考えられてきましたが、男性にも発症することがあり、近年では男性の摂食障害についても注目されています。また、やせることへの強い願望や体型へのこだわりがみられることが多く、思春期の身体変化、学業や社会生活上のストレス、体重管理が求められる環境などが発症のきっかけとなる場合があります。

この病気の原因はわかっているのですか?

神経性やせ症は、一つの原因によって発症する病気ではありません。文化社会的要因、心理的要因、生物学的要因などが複雑に関連し合って発症する、多因子疾患と考えられています。文化社会的要因としては、やせた体型を理想とする価値観、体型や外見への過度なプレッシャー、SNSやメディアなどを通じた身体イメージへの影響などが関与すると考えられています。心理的要因としては、完璧主義傾向、不安の強さ、自己評価の低さ、身体イメージの障害、認知の偏りなどがあげられます。また、生活環境や人間関係などが発症や経過に影響する場合があります。生物学的要因としては、遺伝的な体質、視床下部―下垂体系を含む神経内分泌機能の変化、摂食行動に関わる神経伝達物質や脳機能の変化などが報告されており、発症しやすさや病気の維持に関与していると考えられています。

この病気は遺伝するのですか?

神経性やせ症は、単一の遺伝子によって発症する病気ではありません。しかし、家族内での発症頻度や双生児研究などから、発症しやすさには遺伝的な体質が関与していることが明らかになっています。一方で、遺伝的な体質だけで発症するわけではなく、やせを理想とする社会的環境、心理的要因、生活上のストレスなど、さまざまな要因が複雑に関係して発症すると考えられています。近年の研究では、神経性やせ症に関連する複数の遺伝的特徴が報告されており、摂食行動や気分、不安などに関わる神経機能との関連も検討されています。しかし、神経性やせ症だけを引き起こす特定の遺伝子は現在のところ明らかになっていません。

この病気ではどのような症状がおきますか?

神経性やせ症では、体重が増えることへの強い恐怖や、やせたいという願望、自分の体重や体型を実際より大きく感じるなどの身体イメージの障害がみられます。その結果、食事を極端に制限するなどの摂食行動の異常が起こり、著しい体重減少や低体重をきたします。一部の患者さんでは、食事制限の後にむちゃ食い(過食)を繰り返したり、体重増加を防ぐために自己誘発性嘔吐、不適切な下剤の使用、過剰な運動などの代償行為を行うことがあります。低体重や低栄養が続くと、電解質異常、徐脈、低血圧、成長障害、無月経、骨密度低下・骨粗鬆症などの身体的合併症を起こすことがあります。また、気分障害、不安障害などの精神的な問題や、不登校、社会生活への適応困難などにつながることもあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

神経性やせ症では、病気の性質上、体重が増えることへの不安が強く、治療の必要性を受け入れるまでに時間がかかることがあります。そのため、まず患者さんとの信頼関係を築き、治療への動機づけを支援することが重要です。軽症の場合には外来での治療が可能なこともありますが、著しい低体重や、徐脈、低血圧、電解質異常など身体的な危険がある場合には入院治療が必要になります。治療では、適切な栄養摂取による体重・身体状態の回復を図るとともに、体型や体重に対する考え方、心理的な問題に向き合うことが必要です。治療には時間を要することも多く、内科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士、管理栄養士など多職種による継続的な支援が重要です。患者さん自身が治療に主体的に参加できるよう支援し、回復に向けた取り組みを医療者とともに進めていくことが大切です。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

神経性やせ症は、適切な治療を受けずに経過すると慢性化することがあり、自然に改善することが難しい場合もあります。また、若年女性に多い疾患であるにもかかわらず、身体的合併症や精神的な問題により生命に関わることがある疾患です。経過は患者さんによって異なりますが、発症から早い段階で専門的な診療につながることが、回復や慢性化の予防につながります。過食や嘔吐などの行動を伴う場合には、より専門的な治療や継続的な支援が必要になることがあります。治療には患者さん本人だけでなく、家族や周囲の人の理解と協力も重要です。医療者とともに長期的に治療に取り組むことで、回復を目指すことができます。
 

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