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メタボリックシンドローム

最終更新日:2019年11月24日

メタボリックシンドロームとは

内臓脂肪の過剰な蓄積があると、糖尿病、高血圧、脂質異常症の罹患率が有意に上昇し、脳卒中や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患が明らかに増加していることが示されています。従って、肥満度(BMI)によらず、過剰な内臓脂肪蓄積があり、かつ、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態をメタボリックシンドロームと呼び、「血糖値がちょっと高め」「血圧がちょっと高め」といった、まだ病気とは診断されていない予備群の段階から健康に留意する目的で提唱されました。我が国における診断基準は、ウエスト周囲長(へそ周りの腹囲):男性 85cm以上、女性90cm以上(可能な限り、腹部CT検査で内臓脂肪面積100cm2以上を確認)を必須とし、脂質異常(中性脂肪 150mg/dl以上、HDLコレステロール 40mg/dl未満のいずれかまたは両方)、血圧高値(収縮期血圧 130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれかまたは両方)、血糖高値(空腹時血糖値 110mmHg以上)の3項目のうち2項目以上を満たすとメタボリックシンドロームと診断されます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

H29年度の国民健康栄養調査によると、20歳以上においてメタボリックシンドロームが強く疑われる者の割合は男性で27.8%、女性で12.9%、予備群と考えられる者の割合は男性で23.6%、女性で7.5%でした。このデータは我が国の診断基準に従ったものであり、内臓脂肪蓄積を必須条件としない基準も国際的には使用されていることから、諸外国との比較は難しいと言えます。

この病気はどのような人に多いのですか?

原発性肥満の項にも記載したように、相対的な栄養過多になっている人に発症するものです。また男性ホルモン、女性ホルモンの低下をきたす更年期の変化は、男女ともに内臓脂肪の蓄積を助長することが知られています。つまり加齢とともにメタボリックシンドロークと診断される割合も増えていることが報告されています。

この病気の原因はわかっているのですか?

内臓脂肪の過剰な蓄積は、インスリンの効きを悪くし、高インスリン血症をもたらします。これは血糖や血圧の上昇の引き金になります。また内臓脂肪が分解して生じる遊離脂肪酸が肝臓に直接流入するため、脂質異常症が発症します。内臓脂肪からは様々な生理活性物質であるアディポサイトカインが分泌されていますが、内臓脂肪型肥満では悪玉のアディポサイトカインの上昇、善玉のアディポサイトカインの低下が示されており、これらがインスリン抵抗性を介して代謝異常を引き起こすことも知られています。さらにアディポサイトカインの異常は、これらの代謝異常を介することなく直接的に動脈硬化性疾患を引き起こすことも報告されています。

この病気は遺伝するのですか?

メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満と生活習慣病からなっています。肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症ともに遺伝的背景があることは指摘されていますので、メタボリックシンドロームと遺伝の関係は深いと言えるでしょう。しかし、上記の個々の病態と独立した遺伝子が存在するかは不明です。

この病気ではどのような症状がおきますか?

基本的には糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病に伴う症状がそれに当たります。しかし我が国における疾患概念としては、糖尿病、脂質異常症、高血圧自体の症状を自覚する以前に診断することを目的としていますので、無症状な方も多いと思います。またBMI 35kg/m2以上の高度肥満症でも診断基準を満たせばメタボリックシンドロームと言えますが、これも疾患概念の本質ではありませんので、過体重に伴う症状も基本的には値しないと考えていいでしょう。

この病気にはどのような治療法がありますか?

メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪の蓄積が病態の根本原因になっているので、内臓脂肪を軽減することが治療の主目的になります。内臓脂肪は代謝が活発な臓器なので、少しの減量でもかなりの内臓脂肪の削減ができ、それに伴った代謝異常の改善も期待できます。最近、現体重の3%減でも代謝異常の有意な改善が得られることが報告されました。治療は肥満症の場合と同様で、食事療法、運動療法を主体とし、相対的栄養過多の是正をめざします。行動療法は減量体重の長期的維持、不用意な体重増加の抑制策として重要です。なかでも有酸素運動では内臓脂肪の有意な減少が期待されますので、無理のないレベルの散歩がお勧めです。個々の病態によっては薬物療法が必要になりますが、元来、たくさんの薬物療法が必要な状態は、すでにメタボリックシンドロームの範疇を超えている病態と考えるべきでしょう。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

適切な加療がなされない限り、糖尿病、脂質異常症、高血圧の悪化が懸念されます。動脈硬化性疾患の発症は、生命の危険を伴う場合もありますので注意が必要です。

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