日本内分泌学会

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原発性副甲状腺機能亢進症

最終更新日:2019年11月4日

副甲状腺とは

副甲状腺は、甲状腺の裏側にある小さな米粒大のホルモンを出す臓器です。通常は、左右に上下2つずつ合計4つあります。そこから、副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone、略してPTH)というホルモンを出します。

PTHは、体の中のカルシウムのバランスを整えるホルモンで、体の中の骨や腎臓に働きかけ、カルシウムをプラスのバランスに持っていく働きをします。

原発性副甲状腺機能亢進症はどんな病気ですか

原発性副甲状腺機能亢進症とは、何らかの原因により副甲状腺が腫大してPTHが過剰に分泌されることにより、必要以上にそのホルモンの作用が出てしまうので、血液中のカルシウムは増加します。また、副甲状腺そのものに病気の原因があることから「原発性」副甲状腺機能亢進症と言います。

PTHは、血液中のカルシウムを調節する最も大切なホルモンで、ほかの原因で低カルシウム血症になった場合には、それを是正しようとするためにPTHの分泌が高まります。この場合は、副甲状腺以外に病気の根源があり、二次的にPTHの量が増えた病態であり上記の原発性とは区別しています。

病気の原因は

原発性副甲状腺機能亢進症の原因には、副甲状腺の腺腫、過形成、がんがあります。このうち8割以上は良性の腺腫で、この場合は4つある副甲状腺のうちひとつが腫大します。

過形成は4つの副甲状腺のすべてが異常になるもので、多発性内分泌腺腫症(英語名multiple endocrine neoplasia :MEN)という遺伝的な病気に合併して起こることがほとんどです。MENは、原因となる遺伝子異常が分かっています。副甲状腺以外に、内分泌腺の腫瘍が見られた場合には、MENの遺伝子検査をすることを勧めます。

がんの場合には副甲状腺が大きく腫大し、高カルシウム血症も高度であることが多く、予後は不良です。

どんな症状がおきますか

原発性副甲状腺機能亢進症の症状は、高カルシウム血症によるものが中心になります。従って、多くの場合は、あまりはっきりした症状はみられません。最近は、健康診断などで血中カルシウム濃度を測定する機会が増えたため、偶然、高カルシウム血症を発見されて診断に至る例が増えています。

初期症状としては、倦怠感、食欲不振、吐き気などの消化器症状がみられますが、カルシウム濃度の上昇が軽度の時にはほとんど自覚症状が無いことが多いです。しかし、高カルシウム血症の程度が進むと、多尿、口の渇きが出現し脱水になり、腎臓の機能も低下します。さらに、急速に病気が進行して高度のカルシウム血症(15mgdl以上)を来すと、意識障害などを伴った生命に関わる状態(高カルシウムクリーゼ)になり、緊急を要することもあります。

症状に乏しい場合でも、原発性副甲状腺機能亢進症が長い間続くと、PTHは高カルシウム血症を招くだけでなく、骨からカルシウムを奪い骨の破壊が進みます。その結果、骨密度が低下し骨粗鬆症となり、骨折する危険性が高くなります。また、骨から放出されたカルシウムは腎臓に沈着するために尿路結石や腎障害を生じることが珍しくありません。実際に、腎結石としてこの病気が発見されることも多いです。

検査

血液検査で、高カルシウム血症と血中PTH濃度の高値があれば診断できます。次に、副甲状腺の腫れとか、腫瘍があるかどうかの検査を行います。まずは、簡単で検査侵襲が少なく、有益な情報が得られる頚部の超音波検査を行います。さらに、CTやシンチグラムなどの画像検査でも確認します。シンチグラムでは、ホルモンを過剰に作っている場所に強い集積がみられます。腫瘍が小さすぎて超音波検査などで見つからない場合や腫瘍は見られているが、それがPTHを作っている腫瘍かどうか知りたい場合に役立ちます。また、副甲状腺以外の場所にある腫瘍を探すには、シンチグラムが有効です。しかし、腫大が軽度の場合には見つからないこともあります。

治療

原発性副甲状腺機能亢進症での治療の原則は、腫大した副甲状腺を摘除する手術です。腺腫の場合には、通常ひとつの腺だけの異常なのでこれを摘出します。最近では、以前に比べてより体への負担が少なく、傷跡が目立たない新しい手術方法が行われるようになりつつあります。

過形成の場合には、4腺すべてが腫れているので、3腺+1腺の一部または4腺切除+1腺の前腕筋肉内へ自家移植します。

高カルシウム血症が軽度で何らかの理由で手術を行わない場合には、カルシウム値、腎臓、骨の状態などの経過を注意深く追いながら、それぞれの症状に対する治療を行っていくという形になります。

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