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非機能性下垂体腺腫

最終更新日:2019年11月17日

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非機能性下垂体腺腫とは

 脳下垂体前葉にできる腺腫の中で、特定のホルモンを分泌せず臨床症状を伴わないもので、下垂体腺腫の中の30-35%を占めます。実際は80−90%でゴナドトロピンというホルモンを産生していますが、血中濃度が大きく上昇しているものはまれです。自覚症状に乏しいため発見されたときにはマクロアデノーマといわれる1cm以上の大きさになっている場合が多いです。最近では脳ドックの頭部MRI検査で下垂体偶発腫として見つかる場合もあります。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

 亡くなった方の調査では20%の方に認められたという報告や、MRIの検査では10%にミクロアデノーマという1cm以下の腫瘍が見つかったという報告があります。下垂体領域の腫瘍の90%は下垂体腺腫ですので、潜在的には非常に多いと考えられますが、多くの場合には無症状で治療は不要な場合が多いです。

この病気はどのような人に多いのですか?

 50歳以上の男性に比較的多く見られます。

この病気の原因はわかっているのですか?

 もともとは一つの細胞が増殖して起きますが、詳しい原因はわかっていません。

この病気は遺伝するのですか?

 まれな原因を除いて遺伝することはありません。

この病気ではどのような症状がおきますか?

 腫瘍が大きくなって下垂体の上にある視交叉(視神経)を圧迫すると視力、視野障害が出現します。視野は両側の外側が見えにくくなる(両耳側半盲)場合が多いです。頭痛もよく見られます。下垂体腺腫を持っている人に突然のひどい頭痛が生じたときには下垂体卒中といって腫瘍の中で出血や梗塞を起こしていることがありますので、すぐに脳神経外科を受診する必要があります。また正常な下垂体組織が障害を受けて下垂体機能低下症(別項参照リンク)をきたすことがあり、1cm以上の非機能性下垂体腺腫の58%の患者さんになんらかのホルモン分泌低下があったという報告があります。プロラクチンというホルモンは上昇することがあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

 視力視野障害があり進行しているときには手術が必要です。経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術が行われます。手術によって視力視野障害は改善を認めることが多いですが、手術後に下垂体機能低下症や尿崩症を合併することがあります。そのような場合やもともと下垂体機能低下症をきたしている場合には適切なホルモン補充療法を行うことが非常に重要です。また多くは良性腫瘍ですが、浸潤性といってまわりの組織に入り込んでいる場合やごくまれに悪性のものもあります。手術後にすぐに大きくなってくる場合や手術が難しい場合にはγナイフなどの放射線療法が行われることがあります。また悪性の場合には化学療法が行われることがあります。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

 通常、6~12ヶ月ごとにMRIで経過を観察していきます。1cm以下のミクロアデノーマの場合には増大することはまれですが、1cm以上のマクロアデノーマの場合、約半数が増大します。症状がなくても大きくなる腫瘍の場合には手術が考慮されます。

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