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リンパ球性下垂体炎

最終更新日:2019年11月9日

リンパ球性下垂体炎とは

下垂体にリンパ球などの細胞が浸潤し炎症が起こる病気です。炎症によって下垂体組織が破壊されて機能が低下します。下垂体前葉が障害され下垂体機能低下症をきたすリンパ球性下垂体前葉炎、下垂体後葉が障害され中枢性尿崩症をきたすリンパ球性漏斗下垂体後葉炎、両者が障害されるリンパ球性汎下垂体炎に分けられます。またIgG4関連下垂体炎では、下垂体にIgG4陽性形質細胞の浸潤や血清中のIgG4濃度の上昇を認め、膵臓など他の臓器に病変が生じることがあります。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

正確な有病率は不明ですが、欧米の報告では900万人に1人、下垂体疾患の0.8-0.9%と報告されています。

この病気はどのような人に多いのですか?

リンパ球性下垂体前葉炎は1:6の割合で女性特に妊娠、産褥期に多く、リンパ球性漏斗下垂体後葉炎は男女ほぼ同じ頻度です。また最近診断される患者さんが増えているIgG4関連下垂体炎は高齢男性に多いと報告されています。

この病気の原因はわかっているのですか?

抗下垂体抗体、抗甲状腺抗体などの自己抗体を認める場合が多く、組織にリンパ球などの浸潤を認め、治療としてステロイドが効果を示すことから、いわゆる自己免疫が原因であると推測されていますが、詳細は不明です。最近、癌の悪性腫瘍の免疫療法に用いられるイピリムマブ(ヒト型抗ヒトcytotoxic T lymphocyte-associated antigen 4 (CTLA-4) 抗体)による薬剤誘発性下垂体炎が報告され、やはり自己免疫が原因であることを示唆しています。

この病気は遺伝するのですか?

遺伝することはありません。

この病気ではどのような症状がおきますか?

下垂体ホルモンの分泌が障害されることが多く、下垂体前葉機能低下症(別項参照リンク)、中枢性尿崩症(別項参照リンク)のいずれかあるいは両方に伴う症状が出現します。また炎症で下垂体が腫大しますと、頭痛や視力視野障害をきたすこともあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

下垂体前葉機能低下症あるいは尿崩症を呈した場合にはそれぞれ分泌低下したホルモンの補充療法を行います。腫大によって視力視野障害をきたした場合にはステロイドによる薬物療法やさらに無効な場合には経蝶形骨洞的下垂体腫瘤摘出術を行います。下垂体腫大をきたす原因には様々なものがあり原因によって治療法が異なるため、薬物療法などの治療を行う場合には、手術を行い、病理診断が必要な場合があります。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

長期的な経過については十分明らかになっていません。下垂体の腫大が自然に治ることもありますが、ほとんどの下垂体炎では1種類以上のホルモン分泌が低下しており、特に中枢性尿崩症の場合にはデスモプレシン製剤による治療が生涯必要な場合が多いです。長期的には下垂体が萎縮してトルコ鞍空洞症候群になることもあります。

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