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ACTH単独欠損症

最終更新日:2021年4月16日

ACTH単独欠損症とは

脳下垂体前葉からは6つのホルモンが分泌されていますが、その中のACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が低下することによって起こります。その結果、副腎から分泌される副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌低下が起こり、副腎不全という状態を引き起こします。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

日本人で比較的多く10万人あたり4~7人という報告がありますが、診断されず見逃されている場合があります。

この病気はどのような人に多いのですか?

好発年齢は40~60歳で、1.6 : 1と男性に多く見られます。主に後天性で成人で発症しますが、新生児や小児期の発症もあります。

この病気の原因はわかっているのですか?

成人発症では、橋本病などの自己免疫疾患の合併が多く、抗下垂体抗体の出現頻度が高いことから、主に自己免疫が原因ではないかと推測されています。リンパ球性下垂体炎によってACTHだけが欠損することもあります。下垂体はトルコ鞍空洞症候群(empty sella)を呈する場合が多く見られます。新生児期に発症する場合にはTPIT, POMCという遺伝子の異常によって引き起こされることがあります。注意すべき点はステロイド剤(プレドニンなどの経口薬、塗り薬、喘息などの吸入薬、アレルギー性鼻炎などの点鼻薬、関節内注射など)を使用していると同じような状態になることがありますので、担当医に必ず相談して下さい。

この病気は遺伝するのですか?

成人発症のものは遺伝しません。新生児期に発症し遺伝子異常を伴った場合には遺伝することがあります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

主に副腎不全の症状が引き起こされます。全身倦怠感、食欲不振、体重減少、るいそう、精神機能低下、低血圧、低血糖などが見られます。新生児ではけいれん、低血圧、嘔吐、腹痛、食欲不振、衰弱、黄疸などが見られます。原因不明の関節痛、発熱、炎症などがきっかけになって見つかることもあります。また血液検査では低Na血症、低血糖、好酸球増多などを認めます。

この病気にはどのような治療法がありますか?

副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン10~20mg/日)を経口剤で補充します。朝10mg、夕5mg程度の量でコントロール出来る場合が多いです。症状は速やかに改善します。多すぎても少なく過ぎても問題が生じますので、量の調節は専門医とよく相談しながらすることが大切です。また感染症(発熱、嘔吐、下痢など)、手術、外傷などのストレス時には必ず量を2~3倍に増量することが重要です。増量が不十分だと副腎クリーゼという命に関わる状態になることがあります。必ず緊急時の予備の薬を用意し常に持参するようにしておきましょう。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

病気が回復することはまれで、多くは生涯治療する必要がありますが、きちんと治療することによって元気に生活することができます。上記のようにストレス時の適切な対応は非常に大切です。

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