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先天性副腎過形成症

最終更新日:2019年11月9日

副腎とはどのような働きをする臓器でしょうか?

副腎は腎臓の頭の方に左右1対ある小さな臓器です。副腎は外側と内側に分かれています。外側にある副腎皮質からは糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、副腎アンドロゲン、という3つのホルモンが、内側にある副腎髄質からはカテコラミンというホルモンが作られています。これらのホルモンは血液中に分泌されています。糖質コルチコイドは血糖値を維持したり、身体的ストレスから体を守る働きを担っています。鉱質コルチコイドは体に塩分(ナトリウム)と水分を蓄える働きを持っています。副腎は小さいながらも、無くてはならない重要なホルモン分泌臓器です。

先天性副腎過形成症とはどのような病気でしょうか?

副腎皮質では、さまざまな酵素が働くことによって3つのホルモンが作られています。この酵素の働きが生まれつき弱いと、糖質コルチコイドを十分作ることができません。これを先天性副腎皮質酵素欠損症と呼びます。糖質コルチコイドの合成に関わる酵素は数種類あるため、6つの疾患が含まれます(表)。日本人では90%以上が21-水酸化酵素欠損症です。
糖質コルチコイドを十分作ることができないと、副腎が腫れていきます(過形成といいます)。糖質コルチコイドが不足し、副腎が腫れる生まれつきの疾患を先天性副腎過形成症と呼び、6つの先天性副腎皮質酵素欠損症のうちP450オキシドリダクターゼ欠損症を除く5つが含まれます。

表. 先天性副腎皮質酵素欠損症の種類

疾患の名称
21-水酸化酵素欠損症
先天性リポイド副腎過形成症
P450オキシドリダクターゼ欠損症
17α-水酸化酵素欠損症
3β-水酸化ステロイド脱水素酵素欠損症
11β-水酸化酵素欠損症

先天性副腎過形成症ではどのような症状がでますか?

21-水酸化酵素欠損症のうち最も重症のタイプでは、生まれてから2週間以内に“副腎クリーゼ”を発症することがあります。副腎クリーゼとは、糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドが不足したための命にかかわる状態のことです。母乳が飲めなくなったり、嘔吐したり、脱水になったり、意識がもうろうとしたりして、迅速かつ適切な治療が必要です。21-水酸化酵素欠損症では、皮膚が黒くなったり、女児の外性器の形が非典型的となることも多いです。21-水酸化酵素欠損症の女児は、子宮、卵巣、卵管の構造は正常ですが、陰核が大きくなったり、左右の陰唇がくっついたりして、大部分の女児とは異なった非典型的な外性器の形となります。

先天性副腎過形成症はどのように診断しますか?

現在日本では、21-水酸化酵素欠損症をなるべく早期に見つけて、副腎クリーゼを発症する前に治療開始することを目的として、すべての新生児に対してスクリーニング検査を行っています(新生児マススクリーニング検査と言います)。この検査により、血液中の17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)を調べると21-水酸化酵素欠損症の可能性があるかどうか判定できます。さらに、いくつかの血液検査、尿検査で診断を確定します。

先天性副腎過形成症はどのようにして治療しますか?

不足した糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドを薬として補います。糖質コルチコイドとしてはヒドロコルチゾン、鉱質コルチコイドとしてはフルドロコルチゾンが主に使用されています。女児で外性器が非典型的な場合には、1〜3歳の間に手術を行って修正することが多いです。
大きなけがや発熱、胃腸炎などで強い身体的ストレスを受けた時は、ヒドロコルチゾンの量を増やして内服します。また、副腎クリーゼが少しでも疑われる場合には、できるだけ早く医療機関でヒドロコルチゾンの静脈注射を受けて頂く必要があります。

先天性副腎過形成症は指定難病に指定されていますか?

先天性副腎皮質酵素欠損症に含まれる6つの疾患のいずれかに診断されていて、糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドを薬として補っている方は、すべて指定難病の対象となります。

 

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