日本内分泌学会

English
医療関係の皆様へ
一般の皆様へ
専門医がいる施設はこちら

原発性肥満

最終更新日:2019年11月24日

原発性肥満とは

肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態をいい、体重(kg)/[身長(m)]2で算出されるbody mass index(BMI)が25kg/m2以上と定義されます。中でも、病因が明白なものを除いた肥満を原発性肥満と言います。つまり、不規則な生活習慣を背景に、相対的な栄養過多により発症するものを指し、世間一般に認められる肥満者はこの原発性肥満になります。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

H29年度の国民健康栄養調査によると、肥満者(BMI≧25kg/m2)の割合は男性で30.7%、女性で21.9%、男性では40-49歳が一番高くて35.3%、女性では70歳以上が一番高く26.5%でした。この10年間でみると、男女ともに有意な増減はないようです。このデータは二次性肥満も含んでいますので、原発性肥満に限れば、この割合より幾分少ないものになります。

この病気はどのような人に多いのですか?

不規則な生活をしている人、脂肪分、糖分、アルコールの摂取が多い人、外食が多い人、早食いの人、運動不足の人、ストレスが溜まりやすい人、睡眠不足の人などに多いことが言われています。一般的に、活動することによって消費するエネルギーより、食べることによって摂取するエネルギーが上回っている状態、つまり、相対的な栄養過多になっている人に発症するものです。

この病気の原因はわかっているのですか?

生活習慣病の発症基盤とされているように、前述したような太りやすい生活習慣をもっている人に発症します。

この病気は遺伝するのですか?

大規模な全ゲノム関連解析や次世代シークエンサーでの解析により、肥満感受性遺伝子の研究が精力的に進んでいます。現在、肥満関連遺伝子として最も確からしいFTO遺伝子は人種を超えて肥満に関連していることが報告されていますが、原発性肥満の多くを証明する原因遺伝子であるとは言えないのが実情です。また肥満に関わる新しい遺伝子領域や遺伝子多型が相次いで報告されています。特にアジア人や日本人を対象にした大規模な遺伝子解析は、大変興味がもたれるところですが、今のところ肥満発症への影響は必ずしも大きいとは言えません。肥満者の家族内に肥満者が多いのは、生活習慣や食習慣が近い上に、このような遺伝子多型をもつことが一因です。従って、遺伝的背景があることは確かですが、環境要因もその発症に大きく寄与しています。最近、環境因子による肥満発症のメカニズムとして、遺伝子の塩基配列によらないDNAのメチル化やヒストン修飾などのエピゲノム制御が注目されています。今後の研究の展開が期待されるところです。

この病気ではどのような症状がおきますか?

過体重では膝関節や股間節に多くの負荷をかけ、変形性関節症が発症しやすくなります。また腰痛のもとになる変形性脊椎症も代表的な合併症です。睡眠時無呼吸症候群では、大きないびきと日中の眠気が主な症状です。夜中に何度も目を覚まし熟睡ができなくなります。女性では月経異常や不妊の原因になり、妊娠高血圧症候群や分娩異常の頻度も増加します。一方で脂肪が蓄積する場所も重要で、内臓脂肪の蓄積が顕著になると、生活習慣病を引き起こす原因となり、それに伴った症状がでてきます。このように肥満に関連した具体的な健康障害として、以下の11の疾患があげられています。1)2型糖尿病、2)脂質異常症、3)高血圧、4)高尿酸血症・通風、5)狭心症・心筋梗塞、6)脳梗塞、7)脂肪肝、8)月経異常・妊娠高血圧症候群、9)睡眠時無呼吸症候群、10)変形性関節症・変形性脊椎症・腰痛症、11)肥満関連腎症。その他にも、胆石症、気管支喘息や皮膚疾患に加えて、大腸癌や胆道癌、乳癌、子宮内膜癌などは肥満と関連して発症が増加します。このように原発性肥満では、脂肪量過多に伴う症状とともに、内臓脂肪蓄積に伴い発症してくる種々の健康障害による症状も理解しておく必要があります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

すべての肥満が減量を必要とするわけではありません。肥満の程度は軽くても、合併症が発症している場合、また現時点では発症していなくても、将来的に発症する危険が高い場合には減量治療を検討する必要があります。減量が必要な原発性肥満を「肥満症」と定義し、前述した11の疾患を合併した原発性肥満の方々が対象です。治療の原則は、日常の摂取エネルギーが消費エネルギーより少なくなるようにし、それを長期間継続することによって、体脂肪を減少させることにあります。食事療法、運動療法、薬物療法、外科療法は相対的エネルギー摂取過多の防止に相当し、行動療法はそれらの治療を遂行するにあたり、減量体重の長期的維持、不用意な体重増加の抑制策として重要です。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

肥満症であれば、適切な加療がなされない限り、肥満に関連した健康障害の悪化が懸念されます。疾患の内容にもよりますが、命の危険にさらされる場合もあります。

このページの先頭へ