日本内分泌学会

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副腎偶発腫瘍

最終更新日:2019年11月4日

副腎偶発腫瘍とは

副腎疾患の診断を目的としない画像検査で偶然に指摘された副腎腫瘍の総称です。人間ドックのCT検査などで指摘されることが多く、また腹部手術の術前検査や腹痛の原因のスクリーニング精査として行った腹部画像検査で指摘された場合も、これに含みます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

比較的頻度が高く、CTなどの画像検査で約4%に見つかると言われています。また年齢とともにその発症頻度が増えることが知られており、剖検症例では約7%に副腎腫瘍が指摘されると言われています。

この病気の原因は何ですか?

副腎偶発腫瘍の原因の内訳で、約半数を占めるのは、非機能性副腎皮質腺腫です。良性腫瘍かつホルモン異常を伴わない副腎腫瘍です。次に多いのは、コルチゾール産生腺腫であり、約10%を占めます。多くはサブクリニカルクッシング症候群であり、顕性クッシングはホルモン症状が前面に出るため、副腎偶発腫瘍として発見されることは比較的少ないとされています。アルドステロン産生腺腫(原発性アルドステロン症)も同様の理由で、高血圧が症状の前面に出るため、副腎偶発腫瘍として発見されることは少なく、数%と言われています(注)。その他、比較的多い原因としては褐色細胞腫が挙げられ、8%程度を占めます。また頻度は低いですが、副腎皮質癌あるいは転移性副腎腫瘍、悪性リンパ腫など、悪性病変もあるので、腫瘍サイズが大きいもの(4cm以上)については特に注意が必要です。また逆に、比較的サイズの大きいものでも、嚢胞や血腫など良性病変もあります。原因の同定は、造影CT検査、MRI検査、シンチグラフィー、ホルモン検査などから総合的に行います。なお、悪性リンパ腫など特定の疾患が疑われた場合は、副腎生検による病理診断を行うことがあります。
注)原発性アルドステロン症は、副腎疾患の内訳に占める割合は最多です。副腎偶発腫瘍に占める割合とは異なります。

この病気は遺伝するのですか?

副腎偶発腫瘍は、様々な疾患の集合体としての概念なので、遺伝性の議論は難しいと考えられます。個々の疾患については、褐色細胞腫など、近年遺伝子の異常が比較的高い頻度で指摘されている副腎腫瘍があります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

上述のとおり、この病気の定義上、症状は呈さないということになります。結果的には、ホルモン産生腫瘍の診断に至ることもあるため、retrospectiveに評価するとそのホルモン異常に関連する症状が見られていることはあります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

疑われる原因により治療法は異なります。悪性の疑いが強い場合とホルモン産生異常を来たす機能性腫瘍の場合は、腫瘍の摘出術を行いますが、それ以外の場合は経過観察となります。特殊なケースとして、悪性リンパ腫であった場合は、その疾患の治療方針に準じて化学療法等を行います。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

良性のホルモン産生腫瘍の場合は、手術治療により治癒が得られます。ホルモン異常のタイプおよびその程度によっては、術前の投薬や術後のホルモン補充療法が必要となります。悪性の場合も、転移がなければ手術治療により治癒が得られます。副腎腫瘍は悪性であっても進行が緩徐のものも多く、術後しばらく経過して局所再発や遠隔転移が見つかることがあります。副腎皮質癌の5年生存率は60-80%、ステージが進行すると30-50%と言われ、予後不良です。良性かつ非機能性腫瘍で、手術せず経過観察の方針になった場合でも、増大傾向が見られたり、少しずつホルモン異常が現れたりすることがあり、手術治療の方針に変わることが数%の症例に見られますので、診断後数年間は定期的に検査を受けることが勧められます。

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