日本内分泌学会

English
医療関係の皆様へ
一般の皆様へ
専門医がいる施設はこちら

心不全と内分泌

最終更新日:2019年11月9日

心不全とは

心不全には急性心不全と慢性心不全があります。

急性心不全は「心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全を来たし、それに基づく症状や徴候が急性に出現あるいは悪化した病態」を言います(急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版より引用)。急性心不全は、急性の新規発症や慢性心不全の急性増悪により起こります。症状や徴候は軽症のものから致死的な場合まで多彩です。

慢性心不全は、「慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を拍出できない状態であり、肺、体静脈系または両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた病態」と定義されます(慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版 2013/9/13更新版より引用)。慢性心不全では、労作時呼吸困難、息切れ、尿量減少、四肢の浮腫、肝腫大等の症状の出現により生活の質の低下(Quality of Life ; QOLの低下)が生じ、日常生活が障害されます。

この病気の原因はわかっているのですか

心不全では、交感神経系、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、利尿ペプチド系に代表される神経内分泌系因子の調整が大きな役割を果たしています。神経内分泌系因子は、心不全の代償性機構として正の側面もありますが、多くは負の作用を示します。神経内分泌因子(BNP等)の測定は、心不全の診断や重症度の診断に日常診療で利用されており、これらの関連薬である、β阻害薬、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬、利尿ペプチド系関連薬もひろく用いられています。

最近、心筋収縮性は比較的保たれているにもかかわらず、心室拡張機能が低下して心不全症状が出現する"拡張障害型心不全"が注目されています。神経体液因子の亢進により生じる心室リモデリング(心肥大、心拡大)、心筋線維化、心内膜下虚血、心筋細胞内カルシウム動態の異常等が拡張障害の大きな要因です。高齢化社会を迎えたわが国では、拡張障害型心不全を中心に慢性心不全患者が増加しており、心不全と内分泌の関係の解明が重要な課題となりつつあります。

このページの先頭へ